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日産マーチはタイから「逆輸入」 日本から工場消えていくのか

   日産自動車が販売価格で100万円を切った新型「マーチ」を発売した。この価格を可能にしたのは、タイ工場で生産して輸入する「逆輸入」だ。国内で販売する量販車を海外で生産するのは初めてで、人件費の安い新興国で生産してコストを削減する狙いがある。

   世界の160か国・地域で販売される日産の「マーチ」は、タイやインド、中国、メキシコなどで生産されている。もう、国内生産車を海外に輸出する時代ではないのか。

逆輸入車と知らずに買う人もいる

日産の新型マーチはタイからの「逆輸入」だ(写真は、マーチ12G)
日産の新型マーチはタイからの「逆輸入」だ(写真は、マーチ12G)

   世界の新車販売で、急速で売り上げを伸ばしているのが、中国やインドなどの新興国向けの低価格スモールカー。日産の「マーチ」や、トヨタがインド市場での投入を発表している「エティオス」、ホンダの「シビック」クラスがそれだ。

   日産が2010年7月13日に発表した新型「マーチ」は、最廉価の「12S」タイプで99万9600円と100万円を割った。従来モデルが110万~180万円なので、10万円以上安くなったことになる。

   燃費は1リットルあたり26キロメートル。赤信号でエンジンが自動的に停止するアイドリングストップ機能がついた「エコ」が売りモノで、性能も高い。

   そんなマーチが、今回のフルモデルチェンジを機に生産拠点をタイに移した。逆輸入して、国内を走ることになる。これまで生産してきた神奈川県の追浜工場での生産は終わる。

   日産は、「タイ工場で生産されているからといって、ユーザーにご迷惑をかけることはありません」(広報部)と話し、メンテナンスなども従来のマーチと何も変わらないという。

   二輪車を含め、1982年からインドに進出するスズキは、欧州(ハンガリー)で生産している「スプラッシュ」を国内で輸入販売している。もともとは欧州車として生産し、それを08年10月から輸入。国内では月間500台を販売目標に、2009年度には約5000台が売れた。

   若い女性をターゲットにした、カラフルなデザインと内装が特徴だが、「購入した人は欧州車とは知らない人もいるのではないでしょうか」(スズキ広報部)と話している。

国内工場で「最終検査」だから安心、と訴える

   国内の生産拠点が海外に移転することで心配されるのが「空洞化」だ。

   日産自動車によると、マーチの生産を終える追浜工場は今後、タイ工場で生産された「逆輸入マーチ」の最終検査を行う。タイ工場の生産ということで「品質」を不安視する向きがあるが、それを封印する一方で、「マザー工場」としてタイなどの世界の生産工場をサポートする役割を担う。

   また、スポーツタイプの小型車「ジューク」の生産や、「電気自動車などの先進的なクルマの製造に取り組んでいきます」(日産広報部)という。

   日産は「クルマは販売するところでつくることを、基本的なコンセプトにしています。いまの国産車の生産をタイ工場に移していくわけではありません」と説明。国内の空洞化を否定する。

   スズキも、国内で生産している小型車の「スイフト」を、インドやハンガリーの工場でも生産。また、インド工場の生産設備の増強を図るなど海外生産に積極的だが、「基本は現地生産、現地販売です。今のところインドで生産しているものを国内に逆輸入することは考えていません」(広報部)と話している。