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長谷川洋三の産業ウォッチ
中国銀行連合総裁の認識:「元切り上げで輸出必ずしも減らない」

「中国の人民元の為替レートにあまり関心を持ち過ぎると問題を複雑にする。中国の為替レートの構成要素には大きなゆがみがあり、為替変動によって輸出入に短期的な影響は出るだろうが、(長期的に見れば)輸出入の不均衡是正につながるとは思わない」

   中国人民銀行の元副総裁で中央銀行貨幣政策委員、中国銀行連合総裁などを務める蘇寧氏は2010年8月30日、東京都内で開いた認定NPO法人言論NPOと中国日報社(China Daily)共催の第6回東京―北京フォーラムで、中国人民元の為替政策の在り方についてこう語り、人民元を切り上げても米国向けの輸出は必ずしも減らないとの認識を示した。

   中国政府は中国製品の輸出攻勢に悩む米国の強い要求もあって2010年6月から従来のドル連動の事実上の固定相場制を、バスケット方式による弾力的な為替政策に切り替え、事実上の切り上げを実施した。しかし為替変動は必ずしも人民元高一途とはなっておらず、蘇元副総裁はこうした動きを検証した上で発言したものだ。

「今後は外需依存を減らし、内需を拡大する」

   「日中経済の拡大とアジアの持続的成長」をテーマとした同フォーラムの経済対話分科会では、武藤敏郎大和総研理事長(元日本銀行総裁)など、日本側のパネリストの多くは人民元の為替レートの弾力化は貿易不均衡是正やインフレ抑制に効果があるとの姿勢で発言した。しかし蘇氏など中国側は「これまでのような輸出に依存する経済モデルで発展することはむずかしい。今後は外需依存を減らし、内需を拡大する経済モデルに変えるべきだ」と指摘、為替政策は必ずしも経済の持続的発展に効果をあげないとの認識を強調した。

   同フォーラムは民間を主体に新しい日中のコミュニケーションチャネルを作ることを目的に2005年8月に立ちあげたもので、両国民の意識や意見を議論に反映させるため毎年、日中で共同の世論調査を行っている。本年の調査では、相手国に対する印象について、日本では「(中国に)良い印象を持っている」人が27・3%に留まり、「良くない印象を持っている人」は72%も占めたのに対し、中国は「(日本に)良い印象を持っている」人は38・3%あり、「良くない印象を持っている人」は55・9%に留まった。また2050年の中国経済予測では、中国の世論が「中国は米国を抜いて世界最大の経済大国となる」が25・9%、「米国と並ぶ大国となる」が57・1%も占めたのに対し、日本の世論調査では、それぞれ11・8%、45・0%に留まり、「中国はこのまま順調に成長することはない」とする答えが20・3%も占めた。