J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

世界第三位のたばこメーカーJT この先どうやって生きていくのか

   2010年10月1日のたばこの一斉値上げによって、国内たばこ消費量は一段と減ると見込まれている。このため、国内最大のたばこメーカー、日本たばこ産業(JT)は品ぞろえの多様化などで市場縮小に備えるが、どこへ行っても紫煙が嫌われるご時世、どこまで有効かは分からない。ロシアやトルコといった新興国市場を中心に世界で販売する「グローバルプレーヤー」としてまい進するしかなく、実際にその通りに進んでいる。

   増税幅が1本当たり3.5円と過去最大となる今回のたばこ増税。葉たばこ農家支援の意味もあり、増税分プラスアルファの値上げ分も1本当たり1.5円程度あり、20本入り1箱でマイルドセブンが300円から410円、セブンスターが300円から440円といった具合に一気に1箱100円以上の値上げとなる。

包装や箱詰めも「高級感」キーワードにリニューアル

   所得が伸び悩むなか、愛煙家には厳しい値上げ。ファイザーの調査では53.3%が値上げによって「禁煙の意志を持つ」と答えるなど、禁煙者の増加が見込まれている。禁煙しない人でも32.2%が「本数を減らす」と答えており、需要減退は確実。JTによると値上げ前の駆け込み需要で4~9月の販売数量は前年同期比11%増加するが、10月~11年3月は反動もあり、45%減と大幅な減少が見込まれている。

   JT以外も含めた国内のたばこ市場はピークの96年度の3483億本から09年度には2339億本となり、3分の1が「消失」してしまっている。値上げだけでなく、健康志向の高まりなどから今後も需要が増える要素は乏しい。

   JTは対応策として「値上げ後の価格にふさわしい高級化」に取り組むほか、品ぞろえを拡充させ、喫煙場所の確保などを進める。JTは今後、500億円以上を投資して、全国6工場で、葉たばこをブレンドした後に加熱、加湿などの処理をする設備を刷新するほか、たばこの風味を高めたり、新しい風味を創出したりする設備も導入する。また、包装や箱詰めも「高級感」をキーワードにデザインなどをリニューアルさせる方針で、できるだけたばこ離れを食い止めたい考えだが、あくまでも減少ペースを緩やかにする対策でもある。

ロシアやトルコといった新興国市場が好調

   一方、JTは99年に米大手「RJRナビスコ」の海外たばこ事業を買収して以降、07年の英大手「ギャラハー」など買収に次ぐ買収で海外事業の強化を着々と進め、現在では120カ国で事業展開する世界3位のグローバルプレーヤーになっている。欧米先進国は日本同様に縮小気味だが、ロシアやトルコといった新興国市場が好調で「海外事業が国内事業の減退を補う」(JT)構図。販売数量ベースでは11年3月期(見通し)に国内1275億本に対し、海外は4330億本で、海外比率は77%に達する。今後も海外比率が高まることはあっても低くはなるまい。

   JTにとって今後の国内事業のリスクはさらなる増税。1箱100円以上の値上げといっても厚生労働省に言わせれば欧米並みの700円前後までは引き上げの余地があることになる。自民党政権時代のように葉たばこ農家をバックに大きな政治力を持った族議員はおらず、税収減を懸念する「親方」財務省が頼みの綱というのでは心細い。新興国を中心とする海外事業を強化するほかはない。