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W杯後に海を渡った日本人選手 欧州が目をつけた「カネと実力」

   サッカー日本代表「ザックジャパン」が、アルゼンチン戦でお目見えした。メンバーには、ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の終了後、欧州リーグへ活躍の場を移した選手も見られた。

   W杯で16強入りした日本代表。その実力が世界でも認められ、海外移籍が続出したのだろうか。海を渡った選手はプレー次第で高年俸を手にし、さらに日本人プレーヤーが欧州チームの熱視線を浴びることも考えられる。

ドイツリーグ香川「チップ並み」の移籍

   川島永嗣、長友佑都、阿部勇樹――。2010年10月8日、アルゼンチン代表との試合に臨んだ「ザックジャパン」には、W杯後に欧州へ渡った「海外組」の名が並んだ。

   イタリア1部リーグ・セリエAのチェゼーナでプレーする長友選手の移籍は、7月14日に発表された。1年間の期限付きながら、開幕からレギュラーとしてフル出場を重ね、評価を高めている。報道によると年俸は6000万円(推定、以下同)で、日本の所属チームであるJリーグ・FC東京では年俸2500万円だったのと比べて、アップも勝ち取った格好だ。ベルギー1部リーグ・リールスに移籍した川島選手も、年俸は5500万円と伝えられているが、これは川崎フロンターレ時代よりも上がった模様だ。

   W杯ではあまり活躍の機会に恵まれなかった内田篤人選手、矢野貴章選手の2人も、いずれもドイツ1部リーグのチームに移籍を果たした。一方、同じドイツのドルトムントが獲得した香川真司は、W杯「落選組」だが、リーグ開幕後6試合で4得点と大ブレイク。香川の場合は完全移籍で、年俸8000万円のほかに本来なら移籍金が生じるところだが、所属していたセレッソ大阪に対する移籍金は「ゼロ」。FIFA(国際サッカー連盟)の取り決めによる「育成費」4000万円を支払うにとどまったといわれている。独メディアは香川の活躍ぶりに、4000万円という金額を「バーゲン」、さらには「チップ並み」と表現し、「お得ぶり」を示している。

「W杯の影響が出るのは、来年以降」

   プロサッカー選手のマネジメントを手がけるジェブエンターテイメントの境大介氏によると、「W杯の影響が出るのは、来年以降」。長友や川島の移籍は、W杯開催前から水面下で進んでいた話であり、大会で活躍したから即オファーが出た、というわけではないと話す。

   欧州のチームにとって日本人選手の獲得は、言葉や習慣の違いなどを考えれば、同じ欧州の選手と比べて「リスクが高い」と境氏。通常日本側から「売り込み」を受けた選手を1、2年かけてその実力、将来性、適応力などを見極め、判断するようだ。なかでも、規模の小さいチームは予算が限られている。一定の金額で能力の高い選手を獲得し、最後は金持ちチームへ高く「売りたい」。そのニーズを満たすのが、レベルアップしてきた日本人選手と見られる。とは言え、年俸を見ると決して安く買い叩かれているわけではなく「実力どおりの評価」(境氏)のようだ。

   サッカージャーナリストの木崎伸也氏によると、香川選手のような「移籍金ゼロ」も、大きな魅力になっているようだ。さらに、ドイツリーグなどは、過去にも複数の選手がプレーしてきたことで「日本人選手の組織に貢献する姿勢、規律正しさに対する評価が積み重なっている」。「コストパフォーマンス」の高い日本人プレーヤーに注目が今後も高まる可能性はあると話す。

   今回海を渡った選手たちが、高いパフォーマンスを見せ続ければ、2011年1月に「解禁」となる来シーズンの欧州チームの移籍市場で、日本人選手が台風の目になるかもしれない。