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米銀最大手バンカメが窮地に ウィキリークスが追い討ち?

   米経済を悪化させる新たな「火ダネ」が、2011年早々浮上しそうだ。米銀最大手のバンク・オブ・アメリカ、通称バンカメが、ニューヨーク連銀や資産運用会社大手のブラックロック、債券運用大手のパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニーから、モーゲージ債券の買い戻しを請求されている。その額は470億ドル相当とされ、他を合わせると総額3750億ドルに及ぶ巨額なものだ。

   さらにはいま話題の内部告発サイト「ウィキリークス」に、バンカメの内部情報が年明けにもさらされるとの情報が追い討ちをかけそう。その信憑性は定かでないが、なにしろ「標的」がバンカメだ。公開されれば米銀行界を巻き込んでの混乱に、米経済の悪化が長期化するのは必至。もちろん、日本経済も無事でいられるはずはない。

多額の「買い戻し」に債務超過の可能性も

   バンカメが買い戻しを請求されているモーゲージ債券は、傘下のカントリーワイド・ファイナンシャルが発行した、住宅ローンを担保にした債券。NY連銀やブラックロックなどは、「(住宅ローンの)借り手の審査に不備があった」「問題のある住宅ローンを組み入れた」ことなどを理由に、買い戻しを訴えた。

   これに対してバンカメは、「応じるつもりはない」と拒んでいる。

   明らかにされている買い戻しの総額は3750億ドル。これはバンカメの自己資本(2305億ドル)の1.6倍にも上る。つまり、実際に「買い戻し」となると、バンカメは債務超過に陥り、経営破たんしてしまう恐れすらある。

   モーゲージ債券の買い取り報道後、格付会社のフィッチ・レーティングスは格付ウォッチ(短期的に格付け変更の方向性を示すコメント)を「ネガティブ」と発表。格下げの可能性が高まったことを示している。

   国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「バンカメを含めた(モーゲージ債券の)発行側は『それほどひどくない』というが、現段階では確定的なことはいえない。ただ、かなりずさんだったことは間違いなさそう」と、バンカメの立場は厳しいとみている。

「円高リスク」ますます高まる

   とはいえ、バンカメは米銀最大手だ。日本のメガバンクがそうであったように、ツービッグ・ツーフェイル、「大きくて潰せない」ことがあってもおかしくはない。

   リーマン・ショックのときに、メリルリンチやカントリーワイドを救済し、また公的資金を資本注入している経緯もあり、「米政府も、なにかあったら助けないわけにはいかないはず」との見方がないわけではない。

   しかし、前出の枝川二郎氏は「買い戻し訴訟のリスクを抱えているのは、なにもバンカメだけでない。米住宅市場は価格がまだまだ弱含みなので、経済全体がよくない中で訴訟リスクの広がりが新たな問題になる」と指摘する。

   損失が広がるモーゲージ債券は、いわば不良債権。多くの米銀でその処理が滞れば、かつての日本のように信用収縮(貸し渋り)が起こり、資金が必要な人に回らなくなる。そうなると、米国では金融の量的緩和の長期化や追加措置がとられる。ドルが売られ、円高リスクが高まって、日本経済も大ピンチというわけだ。