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北朝鮮がネット環境整備始める  ホテルからスカイプ・ツイッターも

   「世界一の情報鎖国」と言われる北朝鮮が、ネット環境の整備を進めている。これまで、通信社などはウェブサイトを持っていたが、サーバーを日本や中国に置いていた。だが、リニューアルされた通信社のページは、北朝鮮に割り当てられたIPアドレスに接続する仕組みで、旧サイトに比べて更新の速度も高い。別の北朝鮮サイトは、最近になってツイッターの活用で注目されたことなども併せて考えると、ネットでの情報発信を強化したい考えのようだ。

   北朝鮮当局が運営するウェブサイトとしては、これまでも「わが民族同士」(http://www.uriminzokkiri.com/)などが知られている。朝鮮中央通信や労働新聞の記事を比較的早いタイミングで掲載することから、日本を始めとする海外メディアに引用される機会も多い。

北朝鮮から直接発信されているサイトの存在確認

北朝鮮国内から発信されているとみられる朝鮮中央通信の公式サイト
北朝鮮国内から発信されているとみられる朝鮮中央通信の公式サイト

   10年7月には、ツイッターのアカウント(@uriminzokkiri)を開設したことでも話題になった。ただし、このサイトのインターネット上の住所にあたるIPアドレスは中国に割り当てられたもので、サーバー自体も中国国内に置かれているとみられている。

   だが、10年10月頃、北朝鮮から直接発信されているとみられるサイトの存在が確認された。サイトを開設したとされるのは、北朝鮮関連ニュースでおなじみの朝鮮中央通信社(http://175.45.179.68/)。サイトのアドレスを、アジア・太平洋地域のIPアドレスを管理しているAPNICのデータベースで調べると、このIPアドレスは北朝鮮に割り当てられており、平壌市普通江(ポトンガン)区域にある「スタージョイントベンチャー」が管理しているとされる。

   連絡先としてタイドメイン(.th)のメールアドレスや、タイの電話・ファクス番号が登録されていることから、同社は北朝鮮企業とタイ企業との合弁企業だとみられる。なお、朝鮮中央通信社も、この普通江区域にあるとされる。

   トップページの一番下には、「朝鮮中央通信社」と著作権表示があり、「www.star.edu.kp」というURLが記載されている。「.kp」は北朝鮮に割り当てられたドメインだが、現時点ではアクセスすることはできなかった。

   なお、同社は、これまでにも日本にサーバーを置いて公式サイトを開設しており(http://www.kcna.co.jp/)、朝鮮語、日本語、スペイン語の3か国後でニュースを配信してきた。ただし、日本のサイトでは文章だけが掲載され、掲載のタイミングも記事配信から1日遅れ(平壌発12月16日の記事が、17日になって掲載される)。これに対して、新サイトでは、写真付きで、記事が配信された当日に掲載される。記事も「政治」「経済」といったジャンルに分類されている。

北朝鮮内部から、外国人がネット接続に成功

   朝鮮中央通信以外に、「朝鮮コンピューターセンター」が運営しているとされる情報サイト「ネナラ」(http://175.45.176.14/も、同様に北朝鮮のIPアドレスから発信されていることが確認されている。

   ネット上の経路を調べる限りでは、鉄道や道路と同様に、両サイトは中国経由でインターネットに接続されているとみられる。

   さらに、北朝鮮内部から、外国人がネット接続に成功した例もある。10年10月10日に行われた軍事パレードで後継者の金正恩氏が全世界のメディアにお披露目された時には、高麗ホテルに設けられたプレスセンターでインターネットネット回線の利用が可能だった。カタールに本拠を置く衛星テレビ局「アルジャジーラ」のメリッサ・チャン記者は、スカイプを使って番組に出演。画質・音声ともに比較的良好で、同記者はツイッター上で

「ツイッターは中国ではブロックされているが、北朝鮮では違う」
「プレスルームにいる北朝鮮の人は、本当によくITのことを知っている」

と感想をつづっている。

   また、「40分前に撮られた写真」として、綿菓子屋の前に市民が並ぶ写真も投稿されている。

   ただし、同記者は、

「携帯電話は空港で取り上げられた」
「(携帯電話の)3Gネットワークは、ごく限られた一部の人しか使えない。我々も、携帯電話をレンタルすることができなかった」

と明かし、

「インターネット接続は、数日に限って、記者のみに提供されたものだ」

ともクギをさしている。

   なお、週刊誌「SPA!」が10年12月14日号に掲載した平壌ルポによると、中流階級の家庭には比較的PCが普及しているといい、現在は国内限定の「イントラネット」が使用できるという。