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エジプトで前代未聞の「ネット鎖国」  なぜこんなことができるのか

   騒乱が続くエジプトで、インターネットへの接続が遮断される事態が起こっている。これまでにも、中国やイランなどで、ネットを通じた抗議活動がエスカレートする例はあったものの、政府が行った対策は、掲示板の書き込みを消去させたり、ネットワークの帯域を制限したりするといった程度のもの。国外との接続が遮断されるのは前代未聞だ。どのようにして、今回の事態は発生したのか。

   ネットワークセキュリティーが専門の米レネシス社(ニューハンプシャー州)が公式ブログで発表したところによると、2011年1月28日7時34分(日本時間)、「ボーダー・ゲートウェイ・プロトコル」(BGP)と呼ばれるインターネット上の経路情報3500件が削除され、エジプトと国外とをインターネットで通信するための経路が消えてしまった。

政府が国内の4大プロバイダーに接続切断命令

   これは、フェースブックなどがデモの動員に影響したとされる他の国とは、やや性格が異なっている。例えば、チュニジアでは特定の通信ルートが遮断され、イランでは帯域を制限するなどの制限が加わった。中国でも、ツイッターに接続できないなどの制限があるものの、特定のソフトを使用してツイッターで発信するなどの「抜け道」はある。だが、国外とのインターネットによる通信が、これほど大規模に遮断されるのは過去に例がない。

   エジプト政府が国内の4大プロバイダーに対して、インターネットへの接続をすべて切断するように命じたことが背景にあるとみられており、エジプトでも事業を展開している英ボーダフォン社は

「エジプト政府は、エジプトの全携帯電話事業者に対して、指定された地域でのサービスを中止するように求めた」

などとする声明を発表している。

国外のアクセスポイントにダイヤルアップ接続

   前出のレネシス社によると、エジプトのネットワークのうち、93%が国外と接続できない状態だといい、現時点でも、エジプト航空(http://www.egyptair.com.eg/)といった、同国を代表するウェブサイトや、前出のボーダフォンのエジプトの現地法人のウェブサイト(http://www.vodafone.com.eg/)にも接続できない状態が続いている。

   それでも、「抜け道」はある。テレビ各局は通信衛星経由で現地の様子を報じているし、1月28日の17時47分には、CNNの記者が、ツイッターで

「携帯電話もブラックベリーも使えない。このメッセージは、CNN本社(米国ジョージア州)の地上線を中継して送っている」

と書き込んだ。

   それ以外にも、固定電話回線で国外のアクセスポイントにダイヤルアップ接続して通信したり、国際電話で国外にいる知人に、ツイートの内容を口述筆記してもらって発信するケースが確認されている。