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福島原発「チェルノブイリ級」か 最悪の「レベル7」へ引き上げ

   福島第1原発事故の国際的な事故評価尺度が、「最悪」のレベル7に引き上げられた。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)と同じレベルだが、経済産業省の原子力安全・保安院は、福島事故の放射性物質の放出量はチェルノブイリ事故の1割程度としている。

   2011年4月12日、同院と原子力安全委員会は合同会見を開き、従来の暫定評価のレベル5(3月18日)からレベル7へ引き上げると発表した。事故発生以降の放射性物質の総放出量は、院の推計で37万テラ(1兆倍)ベクレル、安全委推計は63万テラベクレルで、レベル7(数万ベクレル以上)に相当するという。チェルノブイリ事故は520万テラベクレルとされる。

放出量「チェルノブイリの1割程度」

   「63万テラ」という大きな数字については、「63京(1兆の1万)」と伝えるマスコミもある。1テラは1000ギガで、1000テラは1ペタなので、「630ペタ」と表記すべきだとの指摘もインターネット上にはある。数字で書くと、「630,000,000,000,000,000」となる。

   また、ベクレルは放射線を発する能力を表す単位のひとつで、例えば、水道水の乳児摂取制限のニュースに出てきた数字では、暫定規制値は1キログラムあたり100ベクレル(乳児以外は300ベクレル)だ。

   レベル7への引き上げを受け、「最悪『レベル7』 チェルノブイリ級」(朝日新聞、電子版)、「最悪レベル7 チェルノブイリに並ぶ」(毎日新聞、同)などと報じられた。

   一方で、ネットのツイッターや2ちゃんねるなどでは、「福島が(レベル)7ならチェルノブイリを8か9にするべき」といった声も出ている。「放出量はチェルノブイリの1割程度」「チェルノブイリは炉心が爆発した。福島とは大きく違う」といった点から、「チェルノブイリ並(級)」といった表現に違和感をもっているようだ。

東電「チェルノブイリに並ぶか超える懸念も」

   国際評価尺度は、0から7までの8段階でレベル7が「最悪」だ。レベル7は「深刻な事故」(放射性物質の放出量が数万テラベクレル以上)、レベル6は「大事故」(数千~数万テラベクレル)、「レベル5」(数百~数千テラベクレル)は「施設外へリスクを伴う事故」と位置付けられている。レベル7以上がないため、福島第1原発もチェルノブイリも同じレベルとなっている形だ。

   過去の例では、米国のスリーマイル島原発事故(1979年)がレベル5、日本国内の従来の最悪事故は、レベル4の東海村JCO臨界事故(99年)だった。

   福島第1原発のレベル評価を巡っては、従来の「レベル5」について、海外の専門家らから「評価が甘い。レベル6以上」との指摘が出ていた。一方で、今回の「レベル7」への引き上げについては、日本原子力学会の斎藤伸三・元会長が読売新聞(4月12日夕刊)の取材に対し、「時期尚早」「チェルノブイリと同じレベルということだけで、外国がさらに過剰な反応をする恐れもある」と懸念を示すなどしている。

   福島第1原発からの放射性物質の放出は続いている。原子炉建屋の水素爆発などがあった2011年3月中旬から1週間程度は非常に高い数値だったが以降は低下している、と指摘されている。一方で、東京電力の原子力・立地本部の松本純一・本部長代理は4月12日の会見で、放出量が今後、チェルノブイリに並ぶか超える懸念もある、との見方を示した。