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3・11大地震時の新宿高層ビル 大きく、ゆっくり13分揺れ続ける

   3月11日14時46分。三陸沖を震源地とするM9.0の大地震が起きたとき、東京新宿にある高層ビルは約13分間、揺れ続けていたことがわかった。

「33Fビルの揺れがおさまらない」「これ、ビルの高層階だから、こんなに揺れるの?」「35階めちゃ揺れるんだけど」

54階では3秒間に108センチ横揺れ

   地震発生直後、ツイッターにはこのような書き込みが殺到した。とくに高層ビルの上階にいた人たちが「まだ揺れている」という書き込みをその後も続けていた。また、動画サイト「YouTube」には、新宿のビルがぐらぐらと横に揺れる様子を映した映像がアップされている。男性が「大丈夫あれ?」「地上(の揺れ)はおさまったのに、(高層ビルの)上は(まだ続いている)ね」と叫ぶ声が聞こえてくる。

   気象庁は2011年3月25日、震度計で観測した各地の揺れを発表しているが、震度5強を観測した東京千代田区大手町(気象庁)では、約130秒にわたって揺れが続いた。しかし、高層ビルではこれよりも長い間、揺れていたようだ。

   新宿センタービル(新宿区西新宿)に本社のある大手総合建設会社、大成建設が、このビルでの揺れを調べたところ、長周期地震動に見舞われ、13分間にわたって揺れていたことがわかった。

   地震発生から約2分後に建物が揺れはじめ、6分後のピーク時には最上階(54階)で3秒間に108センチも横揺れした。同ビルには制震装置(震動を吸収する装置)があったため、揺れの2割は吸収できたという。もっとも、ビルによっても状況は異なる。同社の広報は「制震装置のないビルはもう少し長く揺れていたかもしれない。免震装置(揺れを逃す装置)を持つビルではほとんど揺れなかった可能性もある」と指摘する。

   地震には、1秒以下の短い周期を持つ「短周期地震動」と数秒から数十秒の長い周期で揺れる「長周期地震動」がある。また、建物にも固有の振動周期があり、長周期地震動による揺れは高層ビルの揺れと共振しやすい特徴があるという。そのせいで、高層ビルの上階では大きく、ゆっくりとした、まるで船に揺られているかのような揺れが長時間続いたと考えられる。

長周期地震動の影響を受けやすい建物は約1100棟

   長周期地震動の対策については、日本建築学会が地震発生前の3月4日、報告会を実施、その取り組みをまとめたばかりだった。報告では、東海、東南海、南海地震の3連動を想定した場合の超高層建物の揺れは、当初設計時に想定した地震動よりも相当長い時間大きく揺れる可能性が高いが、超高層建物群が崩壊することはほとんどない、としている。もっとも、揺れの度合は構造や設計時期などで建物ごとに異なるし、屋内にある家具や什器の移動や転倒が起きる可能性はある。

   今後の対策への提言では、既存の超高層建物について耐震診断を行い、被害が予想される場合は耐震補強を実施したり、高層建物の揺れを測る観測機器(加速度計)を屋内設置したりすることなどを挙げている。報告によると、長周期地震動の影響を受けやすい建物(高さ70~100メートル以上)は全国に約1100棟あるが、大きな構造被害が生じる建物は限定されるということだ。ある関係者は「長周期地震動は今回だけが特別というものではないが、これを機に古いビルなどでは対応を考える動きが出るかもしれない」と言う。