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原発事故、妻パニックで有給休暇 土浦市職員処分に賛否両論

   原発事故後に有給休暇を取ったとして茨城県土浦市が職員3人を処分したことが、論議を呼んでいる。権利は最大限尊重すべきなのか、それとも公務員は自らに厳しくあるべきなのか。

   「職員が逃げた!」。発覚のきっかけは、市民のうわさだったらしい。

「非常時に、市民の不信と信用失墜を招きかねない」

   土浦市・中川清市長の2011年5月9日会見で、市側は、原発事故後に有給休暇を取った職員が3人いたことを認め、4月20日付で処分したことを明らかにした。

   市民生活部の男性主幹(33)は、原発爆発が相次いだ直後の3月16日夜、妻がパニックになったとして、静岡県浜松市の親類宅へ避難した。そして、17日朝に電話で上司に18日まで有休休暇を取ると連絡し、19~21日の土日祝日を含め、5連休を取った。

   また、市民生活部の男性課長補佐(51)は、勤続25年のリフレッシュ休暇を2月に届け、3月21日から5日間休んだ。さらに市民生活部の別の男性課長補佐(48)は、3月23日から4日間休む同様の届けをし、うち余震対応で出勤した2日間を除いて休んだ。

   3人については、主幹が訓告処分に、課長補佐2人がそれより軽い厳重注意処分になっている。処分理由について、中川市長は会見で、「市の災害対策本部が震災対応している非常時に、市民の不信と信用失墜を招きかねない」などと説明した。

   この処分内容が新聞報道されると、ネット上では、賛否両論が渦巻いた。有給休暇は権利ではないかという意見と非常時に公務員が有給休暇とはけしからんという意見に分かれているようだ。市にも、全国からメール200件ほどの意見が寄せられており、処分について「厳しすぎる」「甘い」と見方が割れているという。

上司の課長3人も厳重注意処分されていた

   地方公務員法上は、職員が有給休暇を取ることは権利として認められている。一方で、自治体には、非常時に休暇時期を変更してもらうことを職員に言える権利がある。土浦市には、非常時の職員勤務について独自の規定はなく、地方公務員法に拠るという。

   市によると、地震があった2011年3月11日から1週間は、24時間体制で全職員が交代しながらも毎日働いていた。市内でも建物倒壊など大きな地震被害があり、原発事故のあった福島県からも500人ほどが避難してきたからだ。その後は、休暇を取るようになったが、職員間で割り振りして決めていた。

   とすると、上司は、3人に非常時であることを説明し、休暇時期を変更してもらうように言わなかったのか。

   この点について、市の人事課長は、取材に対し、3人それぞれの上司に当たる担当課長が、有給休暇を承認していたことを明らかにした。勤続25年休暇については、11年度に繰り越しできないため、それぞれの担当課長が休ませる配慮をしていたという。

   むしろ休暇を承認した課長らが真っ先に処分されるべきではないのか。これに対し、人事課長は、ほとんど報道されなかったものの、それぞれの課長3人を厳重注意処分にしていたことを明らかにした。

   とはいえ、休暇が承認されていたのにも関わらず、主幹らが処分されなければならなかったのはなぜか。それも、主幹は最も重い処分になっているのだ。

   人事課長は、主幹について、非常時の自覚がなく休んだことに加え、別の事情があっての判断だとする。しかし、プライバシーに関わるため、はっきりした理由は言えないという。

   課長補佐2人については、自覚がなかったことに加え、職員を管理・監督する立場の管理職であることを考慮して処分を決めたとしている。