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募金しない生徒名の黒板掲示 中学校側謝罪はしたものの…

   震災義援金に協力しない生徒名を黒板に掲示したことに対し、秋田県大館市立中学校は、「お金に絡むことなので、配慮に欠けていた」と謝罪した。ところが、義援金集めへの考え方などが、大館市教委とまったくかけ離れているのだ。

「今回は生徒全員で決めたことですので、任意ではなく、義務に近いものになります」

「お金に絡むことなので、配慮に欠けていた」

   生徒名掲示が問題になった大館市立中学校の校長は、取材に対し、校内で行った募金について、こう強調する。

   この中学校によると、義援金集めは、生徒会のボランティア委員会が「被災した人たちに何かできないか」と発案した。そして、全校生徒510人が集まって2011年4月28日に開かれた生徒総会で、全会一致で募金を行うことを決めた。つまり、これが義務に近いと主張する根拠というのだ。

   募金は、5月11~17日に1人200円以上として行われた。しかし、2年生の2クラスでそれぞれ、36人中10人が募金していなかった。そこで、2クラスの担任が17日夕、自らの判断で、黒板の端に募金していない生徒の名前を張り出した。募金されたらチェックすることにしたところ、翌日までに7、8割が募金に応じたという。

   ところが、保護者の1人から生徒名掲示に対し苦情があり、学校ではこの日のうちに掲示を撤去した。

   この問題が新聞報道されると、ネット上では、事実上の募金強制だとして批判が相次いでいる。200円以上としたことについても、疑問の声が出ている。

   これに対し、中学校の校長は、生徒名掲示について、「懲罰的な意味ではなく、支援しようという協力の呼びかけだったと思います。しかし、お金に絡むことなので、配慮に欠けていました」と反省の弁を述べた。

「義務に近く、捉え方によっては集金」

   ただ、義務に近ければ、募金ではなく集金になるのではないかという点については、「捉え方によっては」とおおむね認めた。あくまで生徒の自発的な取り組みとしながらも、「担当教員のアドバイスはあったと思う」ともしている。

   募金を200円以上としたことについては、中学校校長は、義務に近いものであったことからそう設定したと説明した。中学生はお小遣いから出すことになるが、「学年通信にも載せて、保護者にも協力を呼びかけ、理解してもらいました。ですから、問題ないと判断しています」と言っている。

   苦情を寄せた保護者は、募金の趣旨をよく分かっていなかったため、学校で説明したところ、了解して翌日に200円を支払ってくれたという。

   義援金は、集計中なものの、10万円余が集まった。ほとんどが200円だという。秋田県共同募金会に寄付し、被災者のために使ってもらうとしている。

   この問題では、一部報道で、普段から忘れ物をした生徒の名前を張り出しているとの校長談話が載り、ネット上で疑問視する声が出ている。

   これに対し、校長は、「一般的に、学校では、宿題ノートを早く出してほしいと名前を張り出すことがあると思います。生徒への懲罰ではなく、時と状況を考えてしていることです」と説明する。

市教委は否定「自発的なもの」

   こうした考え方は、大館市の中学校では、当然とされていることなのか。

   市教委学校教育課の担当者は、取材に対し、校長とはまったく違った見方を示す。義援金については、義務に近いものであることを明確に否定した。

「生徒会で決めたとしても、あくまでも個人の気持ちに基づく自発的なものです。決して、協力を求めて出してもらうものではありません。生徒によっては、学校以外のところで義援金を出していると思います。さらに学校でも、となれば大変でしょう」

   200円以上と決めたことには、担当者は「まとまったお金が力になると考えたのだと思いますが、募金ですので望ましくありません。1円でもいいのですから」と言う。

   忘れ物をした生徒名掲示についても、否定した。「子どもの気持ちを考え、状況を理解したうえで、個別に話さないといけません。個人の名前を軽々しく出すという配慮に欠ける行為は、厳に慎むべきです。画一的に扱うのは失礼ですし、愛情のない行為だと思います。調べてみないと分かりませんが、こうした例はあるのではと危惧しており、学校にも伝えます。人権に配慮しないといけないのに、認識不足で恥ずかしい限りです」