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世界中でエスカレートするハッキング 大手企業やCIA、米上院も「えじき」に

   世界各地で、企業や政府機関を標的にしたサイバー攻撃が続いている。ソニーで1億人の個人情報が流出して以降、任天堂や米シティグループ、CIAと数々のコンピューターシステムが攻撃を受けた。

   これまで複数のハッカー集団が、関与を疑われたり、自ら「犯行声明」を出したりしている。今のところ事態の収拾には至っていない。

中国政府まで関与疑われ、強く否定

ハッキングされた「セガパス」のサイト
ハッキングされた「セガパス」のサイト

   新たにハッカーの攻撃の対象となったのは、ゲーム大手のセガだった。同社は2011年6月19日、欧州の子会社「セガ・ヨーロッパ」が運営する顧客サービスから、約129万人分の氏名や生年月日、メールアドレスといった個人情報が漏れ出したことを発表し、謝罪した。会員登録すると最新の製品情報を得られる「セガパス」というサービスに、外部から不正アクセスがあったという。セガパスのウェブサイトには、「現在改修中のため、新規会員の登録や、既存会員のパスワードを含む各種変更手続きを受け付けておりません」と表示されている。

   各国で、大手企業のハッカー被害が止まらない。大きな痛手を受けているのはソニーだ。4月に米子会社のオンラインゲームのネットワークが攻撃され、1億人の個人情報が流出。以後も米映画子会社や携帯電話会社のウェブサイトが襲われている。ほかにも任天堂の米国法人や、米金融大手のシティグループ、米公共放送「PBS」などが続々と攻撃にさらされた。任天堂は直接的な被害は出なかった模様だが、シティからは約36万人分のカード情報が漏えいし、PBSはサイト上に「ねつ造」されたニュースが一時書きこまれたという。

   対象の範囲は、政府機関や国際機関などへも広がってきた。6月に入って、米上院や米中央情報局(CIA)、さらには国際通貨基金(IMF)のコンピューターシステムにも「魔の手」が伸びた。IMFでは、一部のメールアドレスや文書が消失した模様で、外国政府の関与が取りざたされた。この「外国政府」は中国ではないかとの疑いがもたれたため、中国外務省が強く否定するなど、事態は厄介な方向へ進みつつある。

ウェブ上に攻撃した「成果」を公開

   一連のサイバー攻撃は、2つのグループが「犯人」ではないかと見られる。ひとつは「ラルズ・セキュリティー」と名乗る集団だ。頻繁にツイッターで情報を発信。ウェブサイトには、ソニー・ミュージックやPBS、米上院といったこれまでの攻撃の「成果」を掲載している。例えば、上院から盗んだデータを公開し、そこには「我々は米政府が嫌いだ」といった一文も添えられている。一方で、セガに対してはなぜか味方をしており、ツイッター上でセガのアカウントにあてて、

「我々に連絡をくれ。君たちを攻撃したヤツをやっつける手助けをしよう。我々はドリームキャストが大好きだ」

と、セガが販売していたゲーム機の名を出して「エール」を送っている。 

   6月17日には、一連の活動に関する公式声明を発表。サイバー攻撃をしても黙っているハッカーもおり、本当の被害が分からないことも多いとして、「我々は事態を公表するからこそ、ユーザーは何が起きたかを把握し、パスワードを変更することもできる」と自らの「正統性」を主張している。一方でハッキングを行う理由を「楽しいから」とするなど、その正体はつかみどころがない。

   もうひとつの集団は「アノニマス」と呼ばれる。「世界中に仲間がいる」と自称し、ソニーが1億人の個人情報を流出させたのもアノニマスの仕業ではないかと疑われている。6月中旬にはスペインで、アノニマスのメンバーと見られる3人が逮捕され、後に釈放。トルコでも32人が拘束されるなど、各国の警察当局も「対決姿勢」を見せる。

   これに対してアノニマスは、ネット上で「報復」を宣言。動画投稿サイト「ユーチューブ」では、米連邦準備制度理事会(FRB)に向けて、バーナンキ議長が辞任しなければサイバー攻撃を仕掛けるとの犯行予告動画が流されている。