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破産寸前ギリシャは日本の未来だ 年金カット、消費税大幅アップ、失業者増加…

   財政危機のギリシャで、事態が緊迫化している。ギリシャはEUとIMFから緊急融資を得ることになっているが、それには赤字を大幅に削減することが条件だ。そのためには国有財産の売却や増税が不可欠で、「ギリシャがEUやIMFの保護国になる」などと国民は猛反発。首相は、緊縮財政のための法案を通そうと、自分の首と引き替えに大連立を呼びかけたものの不調に終わり、新たな金融危機に発展する可能性もある。日本もギリシャ同様に財政危機が叫ばれているが、ギリシャのようなことは起こるのだろうか。

   ギリシャ政府は2010年に、債務不履行(デフォルト)を避けるために欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)総額1100億ユーロ(12兆5000億円)の緊急融資を受けている。だが、その条件として、ギリシャ政府は2012年から2015年の3年間で280億ユーロ(3兆2000億円)の赤字削減を迫られている。この赤字削減をめぐって、国中で混乱が広がっている。

11年だけで少なくとも6800億円の増税

   格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)は5月13日、ギリシャの国債の格付けを、「B」から「CCC」に3段階引き下げている。「CCC」は、21段階あるうち下から4番目で、世界の国の中では最低。S&P社では、引き下げの理由として、デフォルトの可能性が高まっていることを挙げている。

   なお、ギリシャより上位の格付けのはずの「Bマイナス」のエクアドルは99年と08年、「B」のアルゼンチンは01年に実際にデフォルトになっている。だが、ギリシャがデフォルトになった際、ポルトガルやアイルランドなど、ユーロ圏全体に影響が及ぶ恐れがあるため、EUとIMFにとって、デフォルトは避けたいシナリオだ。そのため、6月3日には、ギリシャに対する支援継続を発表。7月にはさらに120億ユーロの追加融資が行われる。

   支援を受けるための条件が、財政再建だ。政府は、実行に移すための法案を11年6月9日に議会に提出。(1)11年だけで少なくとも60億ユーロ(6800億円)の増税(2)公的機関売却による220億ユーロ(2兆5000億円)の歳入増(3)公務員給与や年金の削減が骨子だ。ギリシャの経済規模は日本の16分の1程度で、かなりの負担増だと言える。また、(2)の公的機関売却は事実上の民営化だが、ギリシャでは労働者の2割以上が公務員で、強い抵抗が予想される。さらに、公務員の給与や年金は、すでに10年夏までに1~2割引き下げられている。

   10年夏の参院選では、菅首相は

「日本がギリシャのようになってしまっては困る」
「困るのは、年金が減らされ、仕事がなくなる一般国民」

と、ギリシャを引き合いに財政再建の重要性を訴えた。日本国債は11年1月、S&P社の格付けでAAからAAマイナスに下げられている。日本も、ギリシャのようになる可能性はあるのだろうか。

GDPの約1.9倍と日本は先進国で最悪水準

   ギリシャが大混乱に陥ったきっかけが、国債の格下げだ。

   ヨーロッパでは、10年頃から国債の格下げが相次いでおり、10年春にギリシャ国債が格下げされた際には、ギリシャ国債の7割を占める海外マネーがいっせいに売りに出たため市場が大混乱した。一方、日本国債の国内保有率は95%にのぼる。日本では家計の貯蓄率が高く、貯蓄総額は約1400兆円。国債は銀行預金や郵貯貯金の形で国民に保有されており、02年に今回同様、格付けがAAからAAマイナスに下がったときもビクともしなかった。また、今回、ランクが下がったといっても上から3番目から4番目に落ちただけ。ギリシャのようにこの1年半で7番目から18番目まで転げ落ちたのとはわけが違う。

   ただし、いわゆる「国の借金」として知られる公的債務残高は、ギリシャがGDPの約1.2倍に対して、日本は約1.9倍。先進国の中では最悪の水準だ。この「国の借金」は増加する一方で、数年後には1000兆円を超えるおそれがある。貯蓄率も低下傾向が続いている。

   このことから、さらに欧米格付け会社が日本国債の格付けを大きく引き下げた場合、急落(利回りは急騰)する恐れがある。そうなると、国内金融機関が打撃を受けるのに始まって、日本経済全体に混乱が広がる可能性もあり、必ずしも「ギリシャ危機」は他人事だとは言い切れない。