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脳卒中の遠隔診断治療 補助システムを商品化

   現場にいない専門医も動員して脳卒中の患者さんの診断や治療ができる携帯端末システムを東京慈恵会医大脳神経外科 (村山雄一教授) と富士フィルムの共同研究チームが開発、商品化にも成功した。脳卒中救急の質の向上に役立つと期待されている。

   この遠隔画像診断治療補助システム「i-Stroke」(アイストローク) は既に2010年7月から慈恵医大病院で活躍している。脳卒中の救急患者さんが運び込まれると、チーム医療に参加している医師、検査技師、放射線技師ら約30人のiPhone(アイフォン)が一斉に鳴る。患者さんは次々と検査や画像診断に回るが、チームの全員が検査データ、X線CTやMRI画像などの情報を共有できる。薬物治療のケースかどうか、手術が必要かどうか、などのコメントも送れる。

   近年注目されている脳梗塞の血栓溶解療法は発生3時間以内の治療開始が必要で、判断は一刻を争うが、このシステムで大幅にスピードアップできる。同病院の運用実績では、1割は救命に直結し、2~3割は治療内容の向上につながった可能性が高いという。

   もともとは脳神経外科の高尾洋之・助教のアイデア。高尾さんは研修医時代、当直が不安だった。アドバイスを受ける先輩に電話だけでは的確な状況が伝えられず、画像などを見た上での意見が欲しかった。工夫して作り上げたシステムは、患者さんのプライバシー保護のために特定の電話にしか接続できず、一定時間後にはデータが消える仕組みになっている。

   富士フィルムは2011年6月16日からシステムの発売を始めた。ソフトを組み込んだコンピューター装置(i-Strokeサーバー)は、小規模病院で1000万円程度、地域病院のネットワークを組む場合は5000万円程度の価格が見込まれる。東京・港区の慈恵医大病院や東京・狛江市の慈恵医大第三病院で稼働を始めている。

(医療ジャーナリスト・田辺功)