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ジェイ・クルーの震災支援Tシャツ 韓国抗議で「日本海」表記を削除

   東日本大震災の後、日本の支援のため米衣料品ブランドが制作したTシャツに、韓国がかみついた。日本をかたどったデザインに「日本海」の表記があり、これが不適当だとしてネット団体が抗議行動を起こしたのだ。

   日本海の呼称をめぐっては、韓国側がことあるごとに「東海」を主張している。Tシャツ騒動の後も、フランスで開かれた「国際地図学会」で韓国代表団が「東海」のアピールに精を出した。

会員にジェイ・クルーに抗議するよう促す

抗議を受けて「Sea of Japan」を削除したTシャツ(J.CREWのウェブサイトより)
抗議を受けて「Sea of Japan」を削除したTシャツ(J.CREWのウェブサイトより)

   米アパレルの「ジェイ・クルー(J.CREW)」が日本支援のTシャツを発表したのは、2011年4月初めだ。日本地図をメーンにしたデザインで、震災で大きな被害を受けた仙台周辺に赤いハートマークを重ね、日本語で「がんばれ日本!」と入れた。

   日本に近い朝鮮半島や中国、ロシアの一部も描かれ、海洋の名称も英文で入っているのだが、日本海を表す「Sea of Japan」の表記に韓国の団体が異を唱えた。かねてから日本海を「『東海』とすべきだ」と主張し続けている韓国は、震災のチャリティーTシャツとはいえ見逃せなかったようだ。

   ジェイ・クルーへの抗議の中心となったのは、韓国「サイバー外交使節団(VANK)」とみられる。若者を中心に会員数4万人に上る団体で、インターネット上で韓国を海外にPRする目的を持つ。

   単に韓国文化を紹介するのではなく、団体の主張もメッセージとして発信、中でも日本海の呼称問題には敏感だ。VANKの組織紹介文では、ネットを通じた会員たちの「外交活動」の結果、諸外国の人たちが「(自国の)教科書に書かれている『日本海』という表記を『東海』に改めるよう出版元に要求する」くらいまで、団体の活動を推進するとの意志が示されている。

   このVANKのウェブサイトで2011年4月4日、ジェイ・クルーが「日本海」の呼称を使っていることが報告され、「誤った情報をこのまま放置しておいたらどうなるでしょう」と、会員らにジェイ・クルーに抗議するよう促した。「効果」はすぐにあらわれた。ジェイ・クルーは4月6日、同社のフェイスブックのページで次のように発表したのだ。

「当社が制作した日本支援のTシャツのデザインに関して、憂慮を示す数多くのメールを頂戴しました。このため当社は、Tシャツ(のデザイン)を改めることを決め、ウェブサイト上でのTシャツの掲載をいったん取り下げます」

250年前の地図を根拠に「キャンペーン」

   フェイスブックのこの発表には、450件を超えるコメントが付いた。通常のコメントは数件から数十件なのを見ても、ユーザーの関心の高さがうかがえる。投稿者は韓国系と思われる氏名が多く、ハングル表記の書き込みもある。韓国人ユーザーの中には、「被災地への支援は無論惜しまないし寄付もした。でも誤った情報については見逃すことはできない」と、あくまで震災と日本海の表記は別問題で、妥協しない姿勢を見せる意見もあった。

   その後ジェイ・クルーは、このTシャツの販売を再開したが、絵柄からは「Sea of Japan」の表記が消えていた。韓国側の抗議が実った格好だ。

   日本海の呼称問題は、「Tシャツ騒動」以降もたびたび起きている。韓国の主要紙「中央日報」は2011年4月19日、米国務省や米航空宇宙局(NASA)、ユネスコなど海外の政府や国際機関が日本海の表記を変えない現状を挙げつつ、韓国政府の対応が消極的だと報じた。

   2011年7月3日~8日、フランス・パリで開かれた「国際地図学会」では、「東海」キャンペーンが行われたようだ。韓国紙「朝鮮日報」によると、韓国の代表団が会場の展示場にオリジナルのTシャツ1000枚を持参。そこには、250年前にフランスの地理学者が作った日本周辺の地図が描かれていた。日本海は、朝鮮半島に近い部分が「韓国海」、日本列島側が「日本海」と分けて表記されているものだ。韓国側としては、少なくとも「東海」と日本海の併記を求め、その根拠として昔の地図を引っ張り出し、Tシャツにプリントして学会の会場で配布したのだという。