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「自転車保険」なぜないの? 事故は増えているのに

   「環境にやさしい」「健康のため」といって通勤や通学に自転車を使う人が急増するなか、自転車による交通事故も多発している。とくに最近人気のスポーツサイクルはスピードが出るので衝突時の衝撃が大きく、歩行者が死傷する大事故も目立つようになった。

   そんなことで注目されているのが「自転車保険」。ところが、利用者ニーズはあると思われるのだが、パッケージ化された「自転車保険」を取り扱う損害保険会社は案外少ないようなのだ。

賠償金5000万円超のケースも

   警察庁の統計によると、2010年の自転車による交通事故は15万1626件。ここ数年は交通事故全体が減少傾向にあるにもかかわらず、自転車事故の割合は漸増しており、10年には20.9%と4年続けて2割を超えた。このうちの84.0%が自動車との事故だが、自転車同士(単独を含む)や歩行者との事故は6.7%を占めている。

   事故の増加で、自転車に乗っている側が加害者になるケースが増え、それに伴い損害賠償責任を問われるケースも増加。たとえば、男性が信号を無視して交差点に進入し、青信号で横断歩道を歩いていた女性に衝突し死亡させた事故では5438万円の賠償金の支払いを命じられた。

   日本損害保険協会によると、自転車保険には自動車保険にあるような、被害者を救済するための自賠責保険(強制保険)がなく、任意で「個人賠償責任保険」に加入することで損害賠償に備えることができる。

   ただ、個人賠償責任保険は傷害保険や自動車保険、火災保険などの他の保険の「特約」として契約することができる保険なので、「自転車専用」というわけではない。

   そのため、契約している傷害保険や自動車保険などを解約してしまうと、個人賠償責任保険も自動的に解約されてしまう。また、他人にケガをさせたり、他人のモノを壊したりと日常で法律上の賠償責任が発生したときに支払われる保険なので、補償される範囲が広く、その分保険料が割高になるなど利用者には使い勝手がよくないようだ。

採算が合わないため、「特約」に切り替え

   じつは、以前は傷害保険と個人賠償責任保険を組み合わせた自転車専用の「自転車総合保険」があった。ところが大手損保は現在、その新規取り扱いをやめている。損害保険ジャパンは「学校などの団体向けには販売しているが、個人向けは取りやめている」とし、東京海上日動火災保険は「満期を迎えた人には特約に切り替えてもらっている」と話す。いったい、なぜなのだろう――。

   背景には、賠償金の高額化がある。自転車保険の保険料が安く、その一方で事故が増え、かつ賠償金額が高騰したことで損保各社の採算が合わなくなった。また、一般の交通事故傷害保険などで自転車事故の補償をカバーできることから、商品性の重複を避けた。

   そうした中で、2011年5月に開業したばかりのモバイル専業のau損保は、開業記念として「自転車プラン」を販売。月々100円の保険料で賠償保険金が1000万円まで、傷害保険や通院・入院などの補償も付いて、売れている。当初8月31日までの期間限定だったが、好評なことから10月31日まで延長した。

   主に若者や女性をターゲットに、「アプリ感覚で買える商品設計にした」(同社経営企画部)ことが奏功している。

   また、三井住友海上火災保険がYahoo!と組んで販売している「Yahoo!ちょこっと保険」は、Yahoo!プレミアム会員を対象に月々390円から自転車保険に加入できる。賠償保険金は1000万円で、ケガのときの通院・入院補償も付いていて、手応えを感じているようだ。