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ソフトバンク株が暴落、年初来安値 KDDI「iPhone 5発売」ショックは強烈

   米アップルのスマートフォン「アイフォーン」の次期モデルが、KDDIから発売されるとの報道が相次いでいる。現在国内でアイフォーンを販売しているソフトバンクモバイル(SBM)は、独占販売が崩れることになる。そのためか、このニュースが流れるとソフトバンクの株価が大きく値下がりし、年初来安値を記録した。

   「アイフォーン5」の発売について、アップルはこれまで沈黙を守っているが、2011年10月に発表されるのではないかと言われている。

意味深な孫社長「正道を選ぶか邪道を選ぶか」

KDDIモデルが登場するか
KDDIモデルが登場するか

   順当なら国内ではSBMから発売となるが、これにKDDIが割って入り、複数の通信会社がアイフォーンを取り扱うようになる可能性があるというのだ。

   KDDIは携帯電話の加入者数で国内2位だが、2008年のアイフォーン発売以来売り上げを伸ばしてきたSBMに猛追されてきた。スマートフォンへの本格的な移行が遅れたのも、KDDIの足を引っ張った。

   国内でアイフォーンを販売するのはSBMだけ。しかも「SIMロック解除」をSBMが拒み続けているため、他社回線を使えない仕様となっている。ドコモ回線を使ったSIMカードを販売する業者が現れ、海外のSIMフリー版アイフォーンを買ってドコモに接続という「裏技」が可能となったが、KDDIはSBMやドコモと通信方式が異なることもあってか、「蚊帳の外」となっていた。

   調査会社IDCジャパンが6月9日に発表した、2011年1~3月の国内携帯電話市場規模のデータからアイフォーンの出荷台数を算出すると、月間およそ33万台となる。一方、電気通信事業者協会が発表したSBMの契約数は、2011年1月が24万600件、2月は27万100件、3月は49万8100件の純増を記録している。しかもSBMの純増数は、8月まで17か月連続首位。単純比較はできないが、アイフォーンがSBMに相当な貢献をしているのは間違いない。

   アイフォーンの独占販売が崩れればSBMへの影響が大きい、との見方からか、9月22日、ソフトバンクの株価は急落。終値で前日比12.3%も下げた。一方、孫正義社長はツイッターで「全ての人に分かれ道はやって来る。問題は、そこで正道を選ぶか邪道を選ぶかだ」と、真意は不明だが意味深な発言を残した。この文面ではSBMが今後どういう対応をするかは不明だが、「正道」の中身に注目が集まりそうだ。

「何が何でもアイフォーン」ではなくなった

   KDDIからアイフォーンが発売されれば、国内大手3社のうちドコモだけが言わば「置き去り」となる。もともとドコモはアイフォーン導入に積極的だったとされ、アップルとSBMが独占販売契約を結んだ後も、ドコモの山田隆持社長が「諦めたわけではない」とたびたび「ラブコール」を送っていた。その後もアップルとの交渉は継続中と明かしているが、7月に雑誌の取材に対して山田社長は、アップルと条件が合えばアイフォーンを発売する意志はあるものの「3年前とは状況が大きく異なっている」とトーンダウンした発言をしている。アイフォーンが発売された2008年当時と比べて、米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」が登場し、ドコモでもアンドロイドを搭載した機種を開発しており、何が何でもアイフォーン、ということではなくなったようだ。

   アスキー総合研究所・所長の遠藤諭氏は「KDDIからアイフォーンが発売されることになっても、驚きはない」と話す。米国では、当初独占販売していたAT&Tに加えて2011年2月からベライゾン・ワイヤレスが販売を開始、売り上げを伸ばしていることから、日本でもKDDIが「2社目」としてアイフォーンを手掛けても不思議ではないということだ。

   さらに、ドコモが今後アイフォーンを発売する可能性も残っていると、遠藤氏はみる。ただし現時点で「ドコモにどれほどのメリットがあるかは疑問」と指摘する。韓国サムスン電子の「ギャラクシー」や英ソニー・エリクソンの「エクスペリア」といったアンドロイドモデルの売れ行きが好調で、「別にアイフォーンでなくてもいい、という利用者は意外に多い」(遠藤氏)というのが実情のようだ。今の状態が続けば、ドコモはアップルとの交渉を焦る必要はない。

   アイフォーンを手に入れたとしても、KDDIにとって「バラ色」となるかは微妙だ。アップルは通信会社に対して、料金面などできつい条件を提示すると言われる。仮にKDDIが低い料金体系でアイフォーンを販売するとなれば、販売台数は伸びても「うまみ」は少なくなる。

   米国では、AT&Tとベライゾンが相次いでパケット通信の定額制プラン廃止を打ち出した。国内でも、アイフォーンが売れれば売れるほどデータ通信量が増大し、通信会社への負担が大きくなって定額制を放棄するという事態に発展するかもしれない。