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孫社長苦笑い「ムチャクチャ」 「iPhone 4S」安値戦争の行方

   米アップルの「アイフォーン(iPhone)4S」の予約が始まった。これまで独占販売していたソフトバンクモバイル(SBM)に加えて、KDDIからも発売となるため、両社の料金体系に注目が集まった。

   月額データ通信料はKDDIがSBMより割高だが、端末料金は若干安い。SBMは、既存顧客をつなぎとめようと「大盤振る舞い」にも見えるプランを用意した。

端末代はKDDI、データ通信料はソフトバンクに「軍配」

「iPhone 3GS」利用者や「iPad2」購入希望者には朗報か(写真は初代iPadとiPhone 3GS)
「iPhone 3GS」利用者や「iPad2」購入希望者には朗報か(写真は初代iPadとiPhone 3GS)

   「iPhone4S」の予約開始日となる2011年10月7日、先に料金プランを明らかにしたのはKDDIだった。データ通信はパケット定額制を採用し、月額4980円に設定した。端末価格は、16ギガバイト(GB)が実質0円、32GBが1万320円、64GBが2万640円となる。それぞれ2年間の継続契約を前提として毎月の支払いから一定額が割り引かれるため、16GBモデルは計算上ゼロになるというわけだ。

   一方SBMは、孫正義社長が10月7日午後に緊急会見を開き、料金体系を説明した。データ通信は現行モデルの「iPhone 4」と同じ月額4410円に据え置き、KDDIよりも安く抑えた。一方端末は、16GBは実質0円と同じだが、32GBは1万1520円、64GBが2万1120円とこちらはKDDIより若干高い。それでも孫社長は「世界で最も安い価格になっているのではないか」と話した。

   また販促キャンペーンの一環で既存、新規双方の顧客に向けて、多機能情報端末「iPad2」の割引を提示。「3Gモデル」を購入した場合、データ通信を100MBまでと上限を設けているものの、パケット定額料金など基本料金を無料にする。

   「iPhone 3G」「iPhone 3GS」という旧モデルの利用者にも特典を示した。「iPhone」は2年契約で、端末代を毎月分割で支払うのが基本だが、特に2009年6月に発売した「3GS」は現時点で契約期間を満了していないケースが少なくない。通常のケースでは途中で解約した場合、残存期間分の端末料金を払わねばならなくなる。これを、「iPhone 4S」に機種変更した場合には免除するというのだ。

   孫社長が会見中、やや苦笑いを浮かべながら「ムチャクチャ」と表現するほどの割引攻勢をかけてきた。

「iPhone 3GS」途中解約でも残金タダ

   例えば、「iPhone 3GS」16GBモデルの契約期間が2011年12月まで続いているが、10月に解約するとどうなるか。SBMとの2年契約では、月額の支払い分から1920円が割り引かれる内容だ。だが契約破棄により、解約した10月に送られてくる請求書、つまり9月分の請求金額には割引が適用されない。また通話料やデータ通信代などの「使用料」はこの時点で終わるが、契約期間は10~12月と3か月あるため、分割で支払う約束をしていた端末料金も残っている。これは月額2200円に上り、計6600円。本来適用されるはずだった割引料金1920円を合わせると、8520円が事実上「解約金」として生じることになる。だが「iPhone 4S」に切り替える場合に限っては、こうした残金は支払いの義務がなくなるというのだ。

   仮にSBMを解約し、KDDIで「iPhone 4S」を購入したとしよう。先述の解約金に加えて、同じ電話番号を継続して使いたい場合は、「番号ポータビリティ(MNP)」を利用するうえでSBMに2100円の手数料を支払わなければならない。ただしKDDIでは、期間限定ではあるがMNPによる新規契約者に1万円を戻すキャンペーンを実施する。顧客にとって、金額的にどちらと契約した方が得かは、データ通信料や端末代、さらには「2年契約」の時期や解約金の額によって条件が変わりそうだ。

   KDDIとSBMにとっては、顧客獲得合戦で負担が増える。KDDIは、データ通信料金をSBMより高額にせざるを得なかったのは、乗り換えを考えていた顧客にマイナス材料となるのは否めない。仮にiPhoneの契約者を伸ばしてトラフィック量が急増した場合、セールスポイントにする「つながりやすさ」を維持できるかも未知数だ。SBMも、もともと「iPhone」は他のスマートフォンのデータ通信料金プランより安いうえに今回の「出血大サービス」、加えて継続している電波改善のための基地局設置と出費がかさむ状態が続く。どちらにとっても「しんどい」戦争なのだ。