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人事マンは新卒採用で高校名重視する 内部進学や推薦・AO入学に厳しい目

   大学新卒者の採用面接で、出身高校名を気にする企業が増えた――。こんなことを明かす人事関係者が相次いでいる。背景には、大学全入時代の買い手市場の事情があるようだ。

「二流の私大を出ていても、高校が名門校なら、『地頭がいい』と思われるんですよ。高校は、推薦では入れないことが多いですからね」

「大学全入時代で、質の不安がある」

出身高校名が気になる?
出身高校名が気になる?

   人材支援会社「クオリティ・オブ・ライフ」コンサルタントの常見陽平さんは、採用担当者の考え方をこう明かす。

   それは、大学が全入時代を迎え、推薦・AO(アドミッションズ・オフィス)入学の割合が増えていることがあると指摘する。

「競争経験のない大学生は大丈夫なのかと、質の不安があるんですよ。それに、こうした経済状況からも、企業が育てる余裕もないですからね」

   大学に入る過程を気にしているというのは、常見さんが各企業の人事担当者から聞いた感触だ。企業のプレエントリーには、ベンチャーでも1万、大手なら数万とかなりの数の応募があり、学生を振り分けるために高校名まで気にするようになったというのだ。

   歴史的な評価のある名門高校出身なら、競争によるストレスに慣れており、入社しても使えるとの判断が企業にはある。それは、灘や開成、麻布などの有名私立はもちろん、地方のエリート公立校もだ。また、中学を受験しているなら、教育熱心な家庭で早くからもまれて育ったと評価されることもあるという。

   ただ、名門校であっても、大学に内部進学した学生は企業が敬遠しがちだとする。受験という競争体験がなく、勉強していないとみられているからだ。一方で、東大受験マシンのように教育される新興進学校の出身者も、入社するまでに伸び切ってしまっているとして評価がよくないそうだ。

   人材コンサルティング事業を手がけるヒューマントップ社長の菅原秀樹さんも、高校名などを気にする企業が増えてきたと感じている。

「遠回しに推薦入学か聞かれたよう」

「人事担当者との交流会で聞きますと、優秀な人事マンは学生の出身高校を見ていますね。大学入試は、一発勝負ですから、ラッキー、アンラッキーもあります。それに比べて、出身高校は確かな情報で、名門校なら地元名士や役所幹部などいいOBがたくさんいて、ビジネスの利点になると考えているようですよ」

   菅原秀樹さんも、推薦・AO入学や内部進学の学生に、企業は厳しい目を向けていると指摘する。

「厳しい競争を経験しておらず、勉強していないとみられているからです。例えば、慶応幼稚舎からのストレートよりも、地方の名門高校出身者の方が出世すると考えていますよ。幼稚舎なら、入学するときに親の年収とかで決まるとみられていますからね」

   雑誌「プレジデントファミリー」の2010年11月1日号によると、大手企業数社の人事担当者に取材すると、高校名まではチェックしていない企業が多数派だった。しかし、大企業の採用戦略立案などを手がける企業の社長や、学生の人気が高い食品大手企業の担当者は、高校名を気にすると答えた。

   都内の大学生2人と新入社員3人にJ-CASTニュースが取材すると、企業の採用面接で高校名を聞かれなかったというケースがほとんどだった。しかし、聞かれたケースも2、3あり、ある有名私大4年生男子は、「地銀の面接で文系か理系かや何が得意だったか質問を受けましたが、遠回しに推薦入学かどうかを聞かれていたようにも思えます」と話した。

   ただ、企業が採用に当たって高校名を重視しているというデータは、まだないようだ。リクルートやマイナビの広報部に取材すると、こうしたアンケート調査などはしたことがないという。