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ルマン24時間トヨタ参戦の狙い  HV車で環境技術世界にアピール

   国際自動車連盟(FIA)が主催する世界耐久選手権(WEC)の一つで、耐久レースの最高峰、ル・マン24時間(2012年6月16~17日、フランス)への参戦を表明しているトヨタ自動車が、レースに使用するマシン「TS030ハイブリッド」をお披露目した。

   3400ccの自然吸気エンジンを搭載、ル・マンでは初めてとなるハイブリッド・システムを採用したマシンだ。第2戦のスパ・フランコシャルン6時間レース(5月5日、ベルギー)にデビューする。

仏サーキットですでに走行テスト

トヨタが「ル・マン24時間耐久レース」で走らせるHVマシン
トヨタが「ル・マン24時間耐久レース」で走らせるHVマシン

   「TS030ハイブリッド」は、1990年代にル・マン24時間で表彰台フィニッシュを達成したTS010とTS020の名を引き継ぐモデルとされ、F1参戦時の拠点だったトヨタ・モータースポーツ(TMG)が開発、製造する。TMGはWEC参戦チームも運営。チーム名は「TOYOTA Racing」だ。

   「TS030ハイブリッド」は、すでに仏ポールリカール・サーキットで初試走を済ませており、ネットではその姿が一部流出して、目ざといファンの間で話題になっていた。

   1月25日からのテスト走行には、トヨタが「本番」で起用する中嶋一貴、アレックス・ブルツ、ニコラス・ラピエールの3人のドライバーが参加し、感触を確かめたようだ。WEC第3戦にあたるル・マン24時間には2台体制で出場する計画で、もう1台のドライバーは現在検討中という。

   トヨタはこれまでに13回ル・マン24時間に出場し、合計36台のマシンを戦わせてきた。表彰台フィニッシュは3回。そのすべてで2位入賞を果たしている。

   「モータースポーツはトヨタのDNAの一部分であり、つねに国際レースの舞台に戻ることを目指してきた。F1撤退などの経緯はあるが、モータースポーツに、新たに挑戦するには適切なタイミングだと思っている」と、トヨタは説明する。

   TIWの自動車アナリスト、高田悟氏は「トヨタにとって、大規模リコールや、東日本大震災やタイの洪水の影響で低下したシェアや信頼を取り戻すためにも、2012~13年は勝負の年になります。なかでも、トヨタの強みであるHV車のマーケットを伸ばすことでシェアアップを図ることが重要です。レースでHV車の性能のよさをアピールすることが、トヨタの技術力への信頼回復にもつながると考えられます」とみている。

   それだけに、ル・マンの行方に注目が集まる。

「HV技術を示す舞台として、ふさわしいと考えた」

   トヨタにとっては、じつに13年ぶりの参戦になるル・マン24時間耐久レースだが、そもそも「ル・マン24時間」は、これまでフランス西部自動車クラブ(ACO)が、このレースを頂点とするル・マンシリーズを欧米・アジアで開催してきた。

   それが2011年3月に、モータースポーツの最高峰「F1」などを主催するFIAとACOが、2012年から「FIA世界耐久選手権」(WEC)として開催することで合意。今年から、WECにル・マン24時間が組み込まれることになった。

   トヨタは2009年のF1撤退からモータースポーツの舞台から遠のいているが、WECをその復帰の舞台に選んだことについて、同社は「レースを通じて環境技術の先行開発を行い、トヨタのクルマづくりにつなげたい。耐久レースでの燃料効率など、トヨタのHV技術を示す舞台として、ふさわしいと考えた」と話している。

   「TOYOTA Racing」チーム代表の木下美明氏は、「HVはトヨタのコア技術で、モータースポーツの舞台でこれを見せることは重要。ラップタイムと燃料効率の両方で高いアドバンテージを発揮できることを証明したい」と語った。