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KDDIでもスマホ通信障害 通信量増加との関連はないのか

   携帯電話のデータ通信をめぐる障害が相次いでいる。NTTドコモで起きた大規模障害は、多機能携帯電話(スマートフォン、スマホ)の普及で大規模通信の制御がしにくくなったことが原因だった。また、KDDIも最大130万人に影響する障害を起こしたばかり。KDDIは通信量(トラフィック)増加との関連を否定しているが、今後対処すべき課題であることには間違いなく、利用者への新たな不安材料だと言えそうだ。

トラフィック増加は「倍々ゲーム」

   スマートフォンの普及にともなってトラフィックが急増し、通信各社は対策に苦労している。例えばNTTドコモでは、トラフィックは09年から10年にかけて約1.7倍、10年から11年にかけて2倍に増加。「倍々ゲーム」の様相を呈している。

   これを背景に、この半年で通信障害が相次いでいる。例えば12年1月25日朝に起きたNTTドコモの障害では、都心で5時間にわたって電話が通じにくくなり、最大252万人が影響を受けた。障害の背景には、ラッシュアワー時に鉄道事故が発生し、電話を使う人が急増したことがあるとみられている。

   具体的には、25日未明にトラフィック増加に備えて「パケット交換機」と呼ばれる交換作業を行ったが、トラフィックの上昇にともなって新パケット交換機の動作が不安定になり、ネットワークに自動的に規制がかかって通話がしにくくなっていた。動画などのデータではなく、「制御信号」と呼ばれる信号のやり取りが急増したのが原因だった。障害は、パケット交換機を古いものに切り換え直して復旧した。

   その半月後には、KDDI(au)でも大規模な障害が発生している。2月9日16時11分から17時17分までの1時間強にわたって、auのスマートフォンでのデータ通信と、法人向けの「リモートアクセスサービス」が使えなくなったり、つながりにくくなったりした。障害の原因はネットワーク設備の故障で、いわゆる「ハードウェア障害」と呼ばれるものだ。

KDDIの障害は、「通信ルート変更」で復旧

   KDDI広報部によると、データが集中的に通る設備が大阪にあり、そこが故障したため、影響が全国に広がったという。設備を交換するのではなく、データの経路を別ルートに切り換えて障害を解消したという。具体的に、どのような機器が故障したかについては明らかにしていないが、通信量の増加と障害との因果関係については明確に否定した。また、音声通話に障害は起こっていない。ただし、前出のドコモの障害でも、発生直後は「設備が故障して処理能力が低下した」などと説明されていたこともあり、今回のKDDIの障害についても、トラフィック増加との関係を疑う向きもある。

   携帯各社は、決してトラフィック増加に手をこまぬいている訳でない。例えばNTTドコモの場合、利用者の5%程度が、全体の半分程度のトラフィックを消費しているのが実情で、そのような利用者に対しては、09年秋から速度規制を導入して混雑の緩和をはかっている。それ以外にも、各社では無線LAN(Wifi)の接続スポットを増設して、トラフィックを逃がす(オフロード)対策も行っている。

   ただし、パケット定額制を見直して、従量課金に踏み切ることについては、ソフトバンクモバイルの孫正義社長が

「料金体系も世界中で見直しが進んでいる」

と述べたのが目立つ程度で、ドコモ・KDDIは慎重姿勢だ。