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アノニマスが欧米で大規模ハッカー攻撃 民主化連帯やウェブ規制反対が目的

   インターネットの自由の保護を標榜するハッカビスト(ハッカー+アクティビスト)集団「アノニマス」は2012年2月上旬、欧米で大規模なハッカー攻撃を実行し、米中央情報局(CIA )をはじめとする複数のサイトが暫く接続できない状態になった。

   2月10日の午後、CIAのウェブサイトが数時間にわたってアクセス不能となった。アノニマスはツイッターなどでCIAサイトを標的にしてDDoS(分散サービス不能)攻撃をしかけたという犯行声明を発表。同グループのツイッターアカウント(@YourAnonNews)から「CIA TANGO DOWN」というメッセージを50万人以上のフォロワーに送った。TANGOとは、米特殊部隊が使う用語で「敵殺害」を意味する。

不法滞在の外国人への取り締まりに抗議

   アノニマスは同日、アラバマ州の州政府や警察のサイトにもハッカー攻撃をしかけ、州民4万6千人の個人情報に不正アクセスしたもようだ。個人名やソーシャル・セキュリティー番号などを塗りつぶした500人あまりの情報をファイル・ホスティングサイトに掲載した。

   同州では9月末に新移民法が成立し、不法滞在の外国人に対し全米でも最も厳しい取り締まりを実施している。交通違反などを犯した人が不法移民である可能性があると判断されれば、警察は身柄の拘束を義務づけられている。2011年12月にはホンダの日本人社員がパスポートと国際免許を提示したにもかかわらず、裁判所への出頭命令を受けた。サイバー攻撃はこの州法への抗議行動だとアノニマスは主張している。

   アノニマスのサイバー攻撃は米国だけに限られず、国境を越えてメキシコも標的になった。メキシコ鉱業省のサイトが同じく10日に接続できなくなった。アノニマスはツイッターで「ハッキングに成功」という短いメッセージを発信した。

模倣品・海賊版拡散防止条約反対が盛り上がる

   こうしたハッキング攻撃の裏には国際的な政治背景がある。2月11日はエジプトのムバラク前政権の崩壊一周年を記念する日であり、エジプトでは民主勢力や組合などが呼びかけてゼネストが始まった。また、ヨーロッパでは英国など大半のEU加盟国が著名済みの模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)への反対運動がネット活動家を中心に展開され、2月11日は「反ACTAの日」としてヨーロッパ各地で街頭デモが繰り広げられた。

   一連のサイバー攻撃は、民主化運動やウェブ規制への反対運動への連帯表明を目的にしているようだ。アノニマスのサイバー攻撃は12日になっても続き、米人口統計局のサイトが標的になった。ヨーロッパでは国際刑事警察機構(インターポール)のサイトが同日、一時接続不能に陥った。(在米ジャーナリスト 石川幸憲)