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「小沢氏復権」には「待った」 新聞各紙は「政治責任」を指摘

   民主党の小沢一郎元代表に無罪が言い渡された。民主党内の一部では早速、小沢氏復権へ向けた動きが始まり、「小沢首相待望論」も再浮上してきた。

   一方、新聞各紙の社説では、「政治責任」の観点から、一様に「小沢氏復権」に「待った」をかけている。ただ、裁判では検察の「不当取り調べ」が問題視されたこともあり、過去に小沢氏へ議員辞職を迫った社も、今回は「説明責任」を求めるにとどまっている。

小沢ガールズ「小沢総理待望論が強まっている」

小沢氏の「復権」はあるのか。
小沢氏の「復権」はあるのか。

   小沢氏の党員資格停止の解除について、輿石東幹事長は、東京地裁で無罪判決が出て間もなく、「党内手続きをとる。連休後でいい」と解除に前向きな姿勢を示した。2012年4月26日朝の公判途中のことで、無罪判決は冒頭で出たものの、判決文朗読は続いているタイミングだった。

   小沢グループの議員らは判決後、テレビ取材などに対し、小沢氏の「今後の活躍」に期待する声を相次ぎ挙げた。「小沢ガールズ」の田中絵美子衆院議員は、フジテレビ系番組の取材に対し、「小沢総理待望論が強まっている」と強調した。

   鳩山由紀夫元首相も、「小沢氏は、政権に不可欠な人材」「早く頑張ってもらえる状況をつくってもらいたい」とエールを送った。

   一方、民主党内の「小沢氏復権歓迎論」に対し、朝日新聞の社説(4月27日付、以下同)は、「こんな動きを認めることはできない」と批判した。

「政治的けじめはついていない」「小沢氏の政治責任が問われている」

との従来の指摘を繰り返している。

   朝日社説では以前から、刑事責任の有無にかかわらず、「小沢氏に政界引退や議員辞職を求めてきた」と触れたが、今回の社説では、「政界引退や議員辞職」をあらためて求める表現は見あたらない。見出しは「政治的けじめ、どうつける」だ。小沢氏に対し、国会の政治倫理審査会に出席し、「説明責任を果たす」ことを求めるにとどまっている。

輿石幹事長の「解除」の動きに「先走り」批判

   検察審査会が最初に「小沢氏起訴相当」の判断を示したとき(2010年4月)という早い段階から、新聞大手5紙中で唯一、社説で小沢氏に「議員辞職すべきだ」と踏み込んでいた産経新聞も、今回の社説(「主張」欄)は「証人喚問で『潔白示せ』 このまま復権は許されない」と、「後退」した印象すら与え兼ねない内容だった。

「司法上の無罪は、政治家としての潔白まで証明したわけではない」「国民への説明責任を果たすべきだ」

と指摘しており、「議員辞職すべきだ」という趣旨の表現は見あたらない。識者投稿欄(正論)では「小沢氏よ『無罪』を引退の花道に」(政治評論家、屋山太郎氏)と載せたが、社説ではそこまで踏み込まなかった。

   読売、毎日、日本経済新聞の3紙の社説も、小沢氏に引退・議員辞職を迫る表現はない。「説明責任」などを求めているだけだ。

   また、小沢氏が「説明責任」を果たすかどうか以前に、党員資格停止という「復権」を果たすのは、まだ早いという指摘もある。4月27日の情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)で、時事通信の田崎史郎・解説委員が、輿石氏の資格停止解除方針について批判した。

   停止処分は、「判決確定まで」となっており、検察役弁護士側が控訴するかどうかも決めないうちに、しかも「判決の朗読中」という判決内容の詳細は不明の段階で、輿石氏が解除に向けた動きに言及したことは「先走りだ」と指摘した。番組は判決内容について、無罪ではあるものの「小沢氏に厳しいもの」としている。

   一方で「とくダネ」は、小沢氏復権を望む小沢氏に近い議員らの声を複数、紹介し、小沢氏への批判と期待のバランスを取った形だ。

   「小沢氏に期待する?期待しない?」と問いかけた、ウォールストリート・ジャーナル日本版の配信記事(4月26日)のネットアンケートでは、27日夕現在、1400票以上の参加があり、「期待する」が64%、「しない」が36%という結果になっている。