J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

漫画「ブラよろ」絶版決定 著者が講談社との出版契約解除

   映画化、テレビドラマ化された「海猿」「ブラックジャックによろしく」などの大ヒット作品で有名な漫画家の佐藤秀峰さんが講談社に対し「ブラックジャックによろしく」の出版契約解除を申し出て絶版が決まったと、2012年4月26日に「ツイッター」で報告した。

   契約を解除したことで、これからは商用、非商用を問わず、作品の二次使用を完全自由化して海外での映像化のオファーなどに応えていくのだという。

「新ブラックジャックによろしく」は契約を解除していない

   佐藤さんは「ツイッター」で、

「ブラックジャックによろしくは、僕から出版契約解除を申し入れ、この度、絶版となりました。 店頭でお見かけの際は違法出版物となりますので、ご連絡ください」

とつぶやいた。海外から「ブラよろ」の映像化のオファーが来ているのだという。いったい佐藤さんと出版元の講談社に何があったのか。ネットで騒ぎになり佐藤さんは改めてブログで27日、「『ブラよろ』出版契約解除のお知らせ」として経過を説明した。

   それによれば、2012年9月15日から商用、非商用を問わない「ブラよろ」の二次使用を完全自由化する計画があり、現在は利用規約の作成などの準備を進めている。そのため独占的な出版契約を解除する必要があり、契約期間満了を待たずに講談社との契約解除に至った、と説明した。

   講談社が保有する漫画の在庫は12年5月20日までに廃棄処分される。ただし、出版契約を解除したのは「ブラよろ」のみで、小学館から出ている「新ブラックジャックによろしく」は契約を解除していない、と書いている。

   なぜ講談社と契約解除をしたのか。そんな質問が「ツイッター」に寄せられると佐藤さんは自身のサイトに掲載しているマンガと文章で綴られた「漫画貧乏」のリンクを張り、これを読めば理由の一端がお分かりいただける、と説明した。

「出版社と心中する以外に生き残る道があるはずだ」

   「漫画貧乏」は、出版社に原稿料と印税の見直しを求める内容で、佐藤さんと思われる主人公の出版社との付き合いや、連載を続ける上での苦労話がふんだんに書き込まれている。例えば、新人が連載を始めても出版社からの原稿料だけでは生活できず、単行本が売れなかった場合は借金だけが残る、という実態だ。

   出版不況が叫ばれても社員に危機感はなく「10年後、漫画はあるのでしょうか?」と問いかけた。また、自分が書いたマンガなのに、出版社が様々な権利を独占しているとも嘆いている。そして、こうした出版社と心中する以外に生き残る道があるはずだとも書いた。佐藤さんは09年9月7日から自身のサイトで漫画の有料配信も始めている。

   講談社に今回の出版契約解除に話を聞いてみると、同社コミック販売部では契約解除になるのは事実だ、と認めた。ただし、まだ交渉は継続中であり、佐藤さんがブログに書いた日付などに関しては決定事項ではない、と説明した。人気を保っている作品が絶版になることは珍しいが、絶版となる日付が決まれば、流通しているものについてはそのまま販売されるものの、講談社の倉庫にある「ブラよろ」は全て破棄されることになるという。