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「裏切った民主議員には報いを」 東電労組執行委員長の「恫喝」が波紋

   「裏切った民主党議員には、報いをこうむってもらう」。東京電力労働組合の新井行夫中央執行委員長が、こんな発言をしたと朝日新聞に報じられ、物議を醸している。

   発言の瞬間、その場にいた約360人から大きなどよめきが起きたという。愛知県犬山市で2012年5月29日にあった中部電力労働組合の大会に、新井行夫中央執行委員長が来賓としてあいさつしたときのことだ。

原発事故について「不法行為はない」と強調

菅直人議員サイトも刺激に?
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   朝日新聞の5月30日付記事によると、新井委員長が不満を示したのは、民主党議員らが脱原発政策を打ち出したことについてだった。新井委員長は、原発事故について、東電は国の認可通りに守っていけば安全と考えてやってきただけだとして、「不法行為はない」と強調した。そのうえで、「支援してくれるだろうと思って投票した方々が、必ずしも期待にこたえていない」と不満をぶつけた。

   新井委員長は、「報い」の内容について、大会では明言していない。しかし、朝日の取材に対し、こうした議員には、来る選挙で推薦を出さないことを示唆している。

   東電労組を裏切った民主党議員とは、具体的にだれを指すのか。

   脱原発と言えば、真っ先に名が上がるのが、菅直人衆院議員だ。原発事故処理に当たった首相時代にこの方向を打ち出し、4月12日に設立された議員連盟「脱原発ロードマップを考える会」の顧問までしている。原発を推進したい東電側とは裏腹に、この会では、原発稼働を25年にゼロにする素案を5月22日に示し、菅氏は6月2日の講演で、民主党は脱原発を総選挙の争点にすべきだとさえ主張した。もちろん、会に参加した議員も裏切ったとみなされうる。

   一方で、新井委員長は、朝日新聞の取材に対し、原発のことだけでなく、雇用や産業の政策についても選挙推薦の判断材料にするとしている。

菅直人事務所「コメントを遠慮します」

   とすると、夏のボーナスが全額カットされたことなどもそれに含まれることが考えられる。冬のボーナス147億円分を盛り込んだ家庭向け電気料金の値上げについても、2012年7月1日実施は難しく、8月以降に延期されたと報じられており、このことも不満の対象になりうる。場合によっては、ボーナス削減の可能性もあるからだ。

   次の選挙では、電気料金値上げについて冷ややかな対応をした民主党議員についても、何らかの判断がなされるのかもしれない。

   新井行夫中央執行委員長の発言について、ネット上では、同様な推測が広がり、「何も反省しとらん……」「内ゲバwww」「税金で暖まった懐からボーナスですか」などと冷ややかな反応が目立っている。朝日新聞の声欄でも6月2日、現場社員でつくる労組の幹部も庶民感覚からずれているとして、「東電 労組の姿勢にも失望」との投稿があった。

   東電労組に対しては、5月30日から取材を始めたが、何度電話しても、書記長ら幹部は外出中などとして、6月4日夕までに話を聞くことができなかった。中電労組本部の書記長は、「ごあいさつをしていただいたのは事実ですが、相手のある話ですので、発言の事実関係も含めてコメントを差し控えさせて下さい」と言っている。

   菅直人事務所では、新井委員長発言をどう考えるのかについて、「今回は遠慮させていただきます。理由は特にありません」と取材に答えるのみだった。