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千葉、神奈川で相次ぐイワシ大量死 「大地震の前触れか」と怯える声も

   千葉県と神奈川県の海岸に、カタクチイワシの死骸が大量に打ち上げられた。千葉では2012年4月以降、魚の「大量死」が10か所で報告されている。

   海岸を埋め尽くす死骸。海面に浮いているものは、すくいあげてもすぐに底から次々に別の死骸が上がってきて回収しきれないほどの量だ。見たこともないような光景に、「大地震の予兆ではないか」とのささやきも聞かれる。

イナダやサメに追われて岩場に入り込んだとの見方

イワシの大群が追いつめられて岸に打ち上げられた可能性も
イワシの大群が追いつめられて岸に打ち上げられた可能性も

   神奈川県三浦市の海岸で2012年6月14日、カタクチイワシの死骸およそ1万匹が打ち上げられていた。現場に赴いて調査した神奈川県水産技術センターの職員はJ-CASTニュースの取材に、「幅が約8メートル、奥行き約25メートルの、ごく限られたスペースの岩場に死骸が集中していました」と説明、死後数日はたっているだろうと推測する。ほかの魚の死骸は見当たらなかった。

   地元の漁業関係者からは、近年カタクチイワシが増えているとの目撃情報が同センターに伝えられていたという。死んだイワシが流されてきたのなら広範囲にわたって漂着しそうなものだが、特定の狭い場所に集まっているのが不思議だ。この職員は、「はっきりとした原因は分かりません」としつつも、「おそらくカタクチイワシの群れが岸の近くを泳いでいたときに、イナダやサメのようなカタクチイワシをエサにする生物が群れを追い、逃げ場を失った結果岩場に入り込み、『大量死』につながったのではないか」と話す。

   この半月ほど前の6月3日、千葉県いすみ市の大原漁港もカタクチイワシの死骸が大量に埋め尽くしていた。その量は200トンを超えるともいわれる。ニュース映像を見ると、港近くの海面は死骸でビッシリだ。千葉県の水産総合研究センターに取材すると、それ以前にもいすみ市や勝浦市など房総半島の港で、イワシの大量死が起きていたと語った。県の勝浦水産事務所の調査結果として、2012年4月上旬からこれまでに10か所の港から報告が上がっていると担当者は明かす。

   一定数の魚が磯に入り込んだりして海岸に打ち上げられる現象は、実は時折発生しているという。ただしこれほど大規模なのは、千葉県でも珍しいそうだ。神奈川の事例同様に「イワシを捕食する魚に追われてどんどん岸に近づいた」結果、酸欠になって死んでいったのではと考えているようだが、はっきりとした原因は究明されていない。

東日本大震災の前週にイルカ50頭打ち上がる

   連続で発生したこの「怪現象」は、インターネット上でも話題を集めている。根拠はないが、「放射能の影響か」との声や、「大地震がくる前兆ではないか」と恐れる書き込みも見られた。

   千葉県の水産総合研究センターの担当者はこれらの意見に、「どうでしょうかね」と首をひねる。1998年にも房総の漁港で大量のイワシの死骸が上がったが、甚大な被害をもたらすような地震は直後に起こらなかったと説明する。神奈川県水産技術センターに聞いても、同じような反応だ。人間には備わっていない地震予知の「センサー」がはたらいたのではとの見方もあるが、大地震とイワシをはじめとする海洋生物の異常行動との間に因果関係は証明されていない。

   ただし、気になる記録が残っていた。2011年3月11日に発生した東日本大震災の前週となる3月4日、茨城県鹿嶋市の下津海岸にイルカの仲間である「カズハゴンドウ」52頭が打ち上げられていたのだ。うち22頭は地元の人たちの手で海に帰されたが、なぜ海岸に迷い込んだのか、原因ははっきりしないままだった。

   太平洋をはさんで米ロサンゼルス南部のヨットハーバーでは、震災直前となる米国時間3月9日、カタクチイワシの死骸が数百万匹の単位で浮いているのが見つかったと報じられた。

   いずれも巨大地震の前触れだったかどうかは分からないが、今回のようにカタクチイワシの大量死が頻発している現状は、少々不気味ではある。