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米国の電子書籍、ハードカバー抜いた 日本市場の拡大「アマゾン次第」か

   電子書籍の普及が進む米国では、2012年に入って売上高がハードカバーを上回った。

   日本の場合、電子書籍の市場規模は紙の書籍に比べてまだ小さいが、米アマゾン・ドット・コムが年内に国内参入を果たせば市場は一気に活性化するとの見方もある。

ペーパーバックとの売上高の差も縮まる

米アマゾンの上陸で国内の電子書籍市場は急拡大か(写真はアマゾン「キンドル」)
米アマゾンの上陸で国内の電子書籍市場は急拡大か(写真はアマゾン「キンドル」)

   米国出版協会(AAP)が出版社1189社に調査したところ、2012年1~3月の電子書籍の売上高は、2億8230万ドル(約225億8400万円)となり、前年同期比で28.1%増になったという。米調査会社が6月15日のブログで明らかにした。AAPは同時に、紙の書籍の売上高も公表。それによると、ハードカバーは2億2960万ドル(約183億6800万円)、ペーパーバックは2億9980万ドル(約239億8400万円)だった。ハードカバーは前年同期比2.7%増だったが、ペーパーバックは同10.5%減となった。

   注目されるのは、電子書籍がハードカバーの売上高を上回った点だ。ペーパーバックとの差も1年前より縮んでおり、来年以降は電子書籍が追い抜く可能性もある。

   これよりひと足先に米アマゾンでは、2010年7月の時点で電子書籍がハードカバーの、また11年1月にはペーパーバックの販売数をそれぞれ超えていた。

   米国の場合、長期休暇に旅行先でゆっくり読書をしたいと思う人が、重くてかさばる紙の書籍の持ち運びを避けて、「キンドル」のような電子書籍端末やタブレット型端末に電子書籍を何冊もダウンロードするスタイルが定着してきたのだろう。広い国土で長距離の移動には航空機の利用機会が多く、空港での待ち時間や機内で電子書籍を読む人も増えていると考えられる。

   日本でも、米アップルの「iPad」が人気を集めるが、電子書籍コンテンツの中心はコミックであり、米国の事情と異なる面も少なくない。5月28日付の日本経済新聞には、電子書籍に関する調査結果が掲載されていた。電子書籍を読んだことがあると答えた人は28%で、20代に限れば4割を超えたが、「1度読んだだけで、その後まったく読んでいない」との回答が41%に達した。試し読みしてはみたがしっくりこない、魅力を感じないというのだろう。

現状では「コンテンツ不足、価格的メリット少ない」

   日経の調査結果を見ると、電子書籍を「読んだことがない」理由として「画面では読みにくい」を挙げた割合が3割を超えているが、読んだ人の中にも同じ感想を持った人が約3割に上った。調査ではこれ以上具体的に踏み込んでいないが、「読みにくさ」は画面そのものの質やサイズ、表示される文字の大きさや鮮明さが原因とも考えられる。携帯電話やスマートフォンを使い慣れている人が少なくないはずだが、一定数のページを読みこなさなければならない書籍となると話は別ということだろうか。

   矢野経済研究所が2012年4月18日に発表した「電子書籍市場に関する調査結果」によると、2010年度の電子書籍の市場規模は670億円、11年度は723億円との推計だ。成長はしているものの、爆発的な伸びは見られない。原因として同研究所は、コンテンツ不足や、紙版と比べて価格的なメリットが少ないと指摘している。

   起爆剤として考えられているのが、2012年中の米アマゾンの日本市場進出だ。既にジェフ・ベゾス最高経営責任者が主要紙のインタビューで年内参入を明言。4月には「大手出版40社と提携」とも報じられた。正式発表はまだだが、矢野経済研究所は「アマゾン効果」で国内の電子書籍コンテンツが徐々に充実し、2~3年で大幅に拡充すると見ている。加えて、電子書籍端末の軽量化などで使いやすさも増すだろうという。

   これにより2014年の電子書籍市場は1197億円、15年には1500億円と急成長を遂げるとした。このころには文芸書をはじめとした書籍の市場規模が、現在売り上げの大きな部分を占めるコミックを逆転すると予測しており、実現すれば米国と同じような形で市場が拡大していることになりそうだ。