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クロマグロに新たな漁獲枠 将来的には日本にも影響か

   日本はクロマグロの最大の消費国であることをご存じだろうか。そんな日本にとって気になる「太平洋クロマグロ」(東部太平洋で捕獲するクロマグロ)の資源管理を話し合う国際会議が2012年6月末、米国で開かれた。

   新たに太平洋クロマグロの漁獲枠が設定されるなど、マグロ類の資源管理は近年厳しくなる一方で、マグロが好きな日本人も無関心ではいられない時代となった。

メキシコから大量に輸入

   この国際会議は、東部太平洋のマグロの資源管理を協議する「全米熱帯まぐろ類委員会」(IATTC)の年次会合だ。同委員会は北米大陸と南米大陸の西岸に接する東部太平洋のカツオ・マグロ類について、日本、中国、米国、メキシコ、ペルーなどの漁業国19カ国と欧州共同体(EU)、台湾が毎年1回、資源管理を議論している。

   クロマグロは本マグロとも言われ、太平洋と大西洋の北半球に分布し、マグロ類では最高級品で、主に刺身に利用される。今回、太平洋のクロマグロの保存管理措置として、2012~2013年の2か年で、加盟国全体で現状の漁獲レベルに相当する1万トンの漁獲枠が初めて設定された。

   もっとも、この海域で日本漁船は現在、クロマグロ漁を行っていないという。従って、今回の漁獲枠設定は日本に直接の影響はない。この海域で操業しているのは大半がメキシコで、米国がそれに次ぐ。

   日本は自国の漁獲だけでは国内需要を賄い切れないため、台湾、インドネシア、韓国、中国などからカツオ・マグロ類を輸入している。メキシコからも多くのマグロを輸入しており、「資源保護の観点から将来的に規制が強化されると、日本の食卓への影響も皆無とは言えなくなる」(漁業関係者)という。

国際的な圧力が強まる

   今回の年次会合で日本が直接、影響を受けたのは、2013年の日本のはえ縄漁業のメバチマグロの漁獲枠を2007年より5%少ない3万2372トンと、4年連続で前年枠を踏襲することが決まったことだ。メバチも刺身や寿司でおなじみだ。

   ただし、日本は同海域で、はえ縄漁船約100隻がメバチを2010年に1万4633トン捕獲しているに過ぎず、漁獲枠には余裕がある。このため水産庁は「実質的に日本漁船への影響はない」と見ている。

   世界的に資源が減少傾向にあるとされるカツオ・マグロ類は、「マグロ類地域漁業管理機関」(RFMO)が太平洋、大西洋、インド洋など海域ごとに五つの委員会を設け、資源保護に当たっていて、年内に大西洋など3海域の国際会議が開かれる。日本はマグロ類の養殖に取り組んでいるほか、国際会議では科学的な調査に基づいた資源管理を行うよう主張、議論をリードしている。

   ただ、一方で、野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の会議では、大西洋・地中海産のクロマグロを絶滅危惧(きぐ)種として禁輸する案が提案されるなど、環境保護の観点からの国際的な圧力も強まる。日本はカツオ・マグロ類の漁獲量が2009年に47万トンと、世界の1割を占める最大の漁業国であり、最大の消費国となっているだけに、摩擦を招かない賢い対応が求められる。