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東京都との「最初の話を蹴飛ばすことはしない」 尖閣諸島地権者、政府との直接交渉を否定

   政府が尖閣諸島を国有化する方針を固めたことを受け、尖閣諸島の地権者である栗原家のスポークスマンにあたる栗原弘行さん(65)が2012年7月20日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。栗原家では、現時点では東京都と交渉を進めており、政府と直接交渉する可能性については否定したが、東京都に売却された後の国有化については「それは都の問題」と容認。栗原家、東京都、政府の3者で話し合いの場を持ちたい考えも明らかにした。

都への売却後に「都がそのまま維持するか、国に移管するかは、都の問題」

記者会見に臨む栗原弘行さん。あくまで東京都との交渉をまとめたい考えだ
記者会見に臨む栗原弘行さん。あくまで東京都との交渉をまとめたい考えだ

   尖閣諸島を構成する主な5つの島のうち、国有地である大正島を除く4つの島の所有権を栗原家が持っている。具体的には、1970年代から弘行さんの兄が3島、妹が1島を所有しているが、13年3月まで政府と賃貸借契約が結ばれている。都との交渉がまとまった場合でも、実際に所有権が移るのは、それ以降になる。

   都との交渉が進む一方で政府が国有化の方針を固めたことについては、栗原さんは

「スタートラインは東京都ということで話し合いが進んでいる。政府等々話があるが、最初の話を蹴飛ばして、いきなり政府ということは、私どもとしては考えていない」

「Aさんに売買ということを終わっていない間にBさんに売っちゃうかな、というような心情の持ち合わせがない」

と、あくまで東京都との交渉をまとめたい考えだが、所有権が都に移った後については、

「都がそのまま維持するか、国に移管するかは、都の問題」

と、国有化には異議を唱えない考えだ。

民間からのオファー「40年間に数十社はあったが、すべて頭からお断りした」

   栗原家では、約40年間にわたって尖閣諸島を所有しているが、その意義を

「(前所有者の)古賀家の歴史、栗原家の目的を重んじた行為」

と強調。経済目的での所有を否定した。その上で、

「歴史が消えることはやらない、民間には売らない」

「民間という意味合いでは、40年間に数十社はあったが、すべて頭からお断りした」

と述べた。

売買額の「数字だけが走って行く」

   また、今回の会見の目的のひとつに「誤解を解くこと」があるという。島の売買額に関して「どうしても、数字だけが走って行く」というのだ。栗原さんは、

「相続の問題を考えると(経済的)評価があるが、経済的評価がつけようがない状況。そこの部分は東京都も栗原家側も、精査している最中なので、どの数字が正しいかということについては、双方で一切発表していない」
「このままエスカレートしていくと、栗原側が『欲張りでこういうことをやっている』ように思われるのではないかという不安がある」

などと述べた。

   民間所有の島を地方自治体や政府に売却することで、外交的リスクが高まるとの見方もあるが、栗原さんは

「1民間人が40年守ってきたことをご理解いただきたい」
「兄弟は4人しかおらず、順次亡くなっていくので、かえって栗原家で持っている方が危険」

などと反論した。また、売却後は、島単体だけではなく周辺海域を含めて経済効果を考える「島嶼(とうしょ)経済学」の考え方をもとに、豊富な水産資源を活用して台湾漁船などを巻き込みながら経済活動が活発化することも期待していると話した。

   尖閣諸島をめぐっては、7月20日午後にも、石原慎太郎都知事が弘行さんの兄と話し合いに入る予定だ。