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うどん、ケーキなど年末に値上げか 米国の干ばつ、小麦価格に影響

   農林水産省が輸入小麦の政府売り渡し価格を2012年10月から主要5銘柄平均で3%引き上げる(1トン当たり5万130円)と発表し、秋以降のうどんや菓子などの価格動向が注目されている。日本は小麦、大麦など麦の需要の約9割を輸入に頼っており、輸入麦については政府が国内生産農家保護の観点から一元的に輸入し、製粉会社に売り渡している。農水省は毎年4月と10月に価格改定を行っており、今回の値上げは2011年10月の2%以来、1年ぶりとなる。

パンや中華めん用は据え置き

   小麦など穀物の国際価格は、中国・インドなど途上国の食料需要の増加、バイオ燃料としての需要増大などで2006年秋ごろから高騰。2008年前半をピークにリーマン・ショック後は大幅に低下したが、2010年7月以降、ロシアの干ばつによる穀物の輸出禁止措置などにより再び上昇するなど、乱高下を繰り返している。今夏は世界最大の輸出国である米国が深刻な干ばつのため、トウモロコシと大豆の穀物価格が高騰しており、これに引きずられる形で小麦の価格も上昇している。

   小麦の国際価格はシカゴ商品取引所で7月に1ブッシェル(約27キロ)当たり9.43ドルと、4~6月の6~7ドルの水準から上昇した。政府の売り渡し価格は過去6カ月の平均買い付け価格を基に算定しており、主要5銘柄平均で平均3%といっても、小麦の種類によって上げ幅が異なる。

   5銘柄のうち、カナダ産など主にパンや中華めんなどに用いる「ハード・セミハード系」と呼ばれる3銘柄の政府売り渡し価格は据え置き。これに対して、うどん、菓子などに用いる「ソフト系」と呼ばれる米国産など2銘柄は8%引き上げる。これらの加重平均が3%というわけだ。

消費生活への影響は限定的

   民間の大手製粉会社は2、3カ月分の小麦の備蓄があるため、10月からの売り渡し価格の引き上げが、ダイレクトにうどんや菓子などの値上げに結びつくとは考えにくい。農水省は「うどんや菓子などの製品価格に占める小麦の割合を考えると、消費生活への影響は限定的とみている」とコメントしている。とはいえ、菓子用の小麦には年末にかけて需要が高まるケーキやビスケット用なども含まれており、今後の価格動向は気になるところだ。 小麦よりも一足先に、高騰が続く大豆やトウモロコシを原料とする食用油や、トウモロコシが乳牛の飼料となるバターは値上げが相次いでいる。小麦の政府売り渡し価格は2008年10月に過去最高の1トン当たり7万6030円に上昇しており、この時は食パン、即席めん、スパゲティーなどが1~3割程度も値上げになった。

   当時に比べれば、今回の5万130円はそれほどの高価格とはなっていない。農水省が「在庫から見て、小麦の需給は適正水準にある」とコメントしているのも安心材料だ。しかし、56年ぶりとされる米国の干ばつでトウモロコシと大豆の国際価格が高値で推移しているほか、小麦は欧州やロシア、インドでも天候の影響が懸念されている。世界的な金融緩和の下、シカゴ市場などの投機マネーは実需以外の材料で動くため、今後とも穀物価格の動向は楽観が許されない。