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尖閣海域で中国漁船やり放題? 小渕書簡で法適用免除されていた

   尖閣周辺海域を目指しているとされる中国漁船1000隻について、それを阻止できない法制度の不備があるとの指摘が識者から出ている。場合によっては、尖閣が中国に占拠される恐れもあるというのだ。

   休漁期が明け、赤い旗を連ねた中国の漁船団が出港し、2012年9月18日か19日に尖閣海域に到着するとされている。

佐藤優さんがブログで「取り締まれない」

   海域では、中国政府の漁業監視船6隻が14日にすでに到着している。漁船団は、合流すれば何らかの行動を起こす可能性が指摘されている。

   しかし、日本が漁船を取り締まるのは、かなりの困難があるようだ。

   元外務省分析官の佐藤優さんは、ブログサイト「ブロゴス」の17日付記事で、中国漁船が尖閣周辺にある日本の排他的経済水域に大量に入って来ても、日本は取り締まれないと指摘した。それは、日中漁業協定の付属文書で、尖閣周辺の水域では、日本の法律適用が免除されることになっているからだ。

   この文書は、自民党の橋本龍太郎政権下で、小渕恵三外相が1997年11月11日に中国と取り交わした書簡の形を取っていた。佐藤さんは、この小渕書簡について、「中国との間に尖閣諸島をめぐる係争が存在することを客観的に認めることになってしまう」と批判している。

   その場合、中国漁船が海域に大量に留まることになっても、日本は、違法操業などで取り締まれないことになる。たとえ、日本の領海に入らないとしても、中国が海域を漁業の既得権にしてしまう可能性がありそうだ。

   さらに、そこから日本の領海を度々侵す恐れもあるようだ。

   テレ朝系「モーニングバード!」では18日、元海上保安官の住本祐寿さんが、諸外国にあるような領海侵犯法が日本にないことの限界を指摘した。中国漁船が日本の領海に入っただけでは逮捕できず、せいぜい放水などで対処するしかないという。大量の漁船が入ってきた場合、海保の巡視船7隻ほどでは対処すら難しいとした。

「協力関係にある」ことが法律適用免除の前提

   とすると、中国側が尖閣周辺海域にどんどん入ってきて、上陸できるすきだらけということになる。尖閣を大量の漁船などで取り囲んでしまえば、中国の人民解放軍が漁民を装って上陸し、尖閣を実効支配してしまうシナリオも現実味を増すわけだ。

   ただ、小渕書簡では、法律適用免除の前提として、「海洋生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを確保するために協力関係にあること」とされている。もし大量の中国漁船が海域で操業するとなれば、その前提が崩れることになるが、その場合は法律適用が免除されないのか。

   この点について、外務省の中国・モンゴル第2課では、「状況を見ないと何とも言えない」「はっきりした解釈は申し上げられない」と取材に対して言葉を濁すだけだった。なぜこのような書簡を取り交わしたかについては、「台湾にも利害があるなど権利関係が複雑ですので、お互いに口出ししないようにあいまいにしたということです」と説明している。

   海上保安庁の広報室によると、領海侵犯法がなく領海を通行しただけでは逮捕できないため、もし尖閣に向かう漁船を見つければ、まず立ち入り検査で事情を聞く必要があるという。そこで尖閣に上陸する疑いが出てきた場合に限って、逮捕することができるそうだ。  なお、中国漁船が尖閣海域に入ったかについては、2012年9月18日夕時点でそのような情報があるかまだ確認できていないとしている。