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「侵略忘れた日本に中国人は怒って当然」 岩井俊二監督のツイートが物議

   映画「Love Letter」などで知られる岩井俊二監督(49)が、侵略戦争をしたことを忘れた日本に中国人が怒っても当然とツイッターでつぶやき、話題になっている。

   日本政府が尖閣諸島を国有化したことをきっかけに、中国では、反日デモの名の下で暴力・破壊・略奪行為が相次いだ。

「自国びいき受け入れがたい」「偏った愛国論は毒」

ツイートが物議に
ツイートが物議に

   かつて柳条湖事件が起きた日の2012年9月18日は騒ぎがさらに広がったが、岩井俊二監督はこの日、むしろ日本の対応に強い疑問をぶつけた。

   石原慎太郎東京都知事の挑発に国が乗ってしまい、中国ともし紛争に発展したらどうするのかと、ツイッターでつぶやき始めたのだ。

   岩井氏は、日本はかつて中国に対して侵略戦争を行ったとし、「侵略された国がまだ怒っていても当然」とする。「それで相手国ばかり責めたのでは相手だって怒り出すのが道理」として、日本は、相手の立場でもう少し考えるべきだと指摘した。

   日本のメディアも中国のことを悪く言い過ぎており、祖国を悪く言われたらどんな気がするかを考えなければならないと言う。そして、「どの国の国民もみんな被害者」とし、「こういう時は国境を越えて同じ気持ちの仲間が連帯して今の平和を守らないと」と訴えた。

   ツイッター上で、中国や韓国で行われている反日教育をどう思うかを聞かれると、岩井氏は、「(侵略を)忘れてしまってる日本の方がどうかしている」と応じた。自国びいきの歴史解釈は受け入れがたく、偏った愛国論は毒だとも言っている。

韓国紙が紹介し、「立派な日本人」と喝采浴びる

   こうした考え方は韓国からも注目を集めたようで、大手紙「朝鮮日報」は19日付記事で、岩井俊二監督のツイートを「一部の日本人たちの偏狭な歴史意識を批判した」と紹介した。記事のコメント欄にも、「まさにそれだ」「立派な日本人です」などと韓国人とみられる賛同の書き込みが相次いでいる。

   これに対し、日本のネット上では、岩井氏の発言を疑問視する声が多い。

   尖閣国有化に反発して反日デモをしたとしても、暴力や破壊・略奪行為をしてもいいというのか、というものだ。また、中国が東南アジアの周辺国を侵略しているのは忘れてもいいのか、日本は村山談話などで繰り返し謝罪しているのを考慮に入れていない、といった指摘もあった。

   岩井氏が中国などに配慮した発言をする背景には、中国の監督らと映画を共同制作したりするなど関わりが深いためではないか、とのうがった見方も出ていた。

   岩井氏の事務所ロックウェルアイズに取材すると、岩井氏のインタビューはしばらく遠慮したいとのことだった。自作映画「ヴァンパイア」が公開された直後などで忙しく、スケジュールが立て込んでいるからだという。

   岩井氏は90年代半ばに、「Love Letter」「スワロウテイル」と立て続けにヒット映画をつくった。テレビCMや多数のトップミュージシャンのミュージックビデオ制作でも知られ、独特の美意識にもとづく映像表現には高い評価がある。