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不調の日ハム・斎藤佑樹が重大局面 プライド捨てる「性格大改造」必要だ

   プロ野球、北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹投手が大ピンチだ。2軍落ち以降、試合では社会人チームにまで打ち込まれるなど精彩を欠いている。

   約2か月の2軍暮らしでようやく復活の兆しが出てきたが、根本的な改善を図らない限り、来シーズン先発で活躍するのは難しいと専門家は考える。

決め球のスライダーで三振が取れない

   「今は『持ってる』ではなくて、背負ってます」

   2012年の3月30日、開幕投手として登板した斎藤投手は、自身初の完投勝利で大役を果たした後のヒーローインタビューで言い切った。高校と大学で日本一に輝いた「持ってる男」が、今度はプロ野球の舞台でチームを支える役目を「背負っている」との自覚を示したのだろう。

   ところが開幕から3連勝を飾ったものの、その後は不安定な投球で試合を壊すケースが増える。ファン投票で選ばれたオールスター戦でも快投はなりをひそめ、最後の登板となった7月29日はオリックスバファローズに対して4回途中6失点でノックアウト。ほどなくして2軍行きが命じられた。

   調整のはずの2軍でも、試練は続く。先発して大量点を取られる試合もあり、首脳陣の期待を裏切った。9月13日には、社会人チームを相手に6回4失点で敗戦投手。優勝争い真っただ中のチームとしては一刻も早いカムバックを願っているはずだが、栗山英樹監督は「点の取られ方」の悪さを指摘し、1軍への昇格を見送った。9月18日付のスポーツ報知は、今季のレギュラーシーズンでの1軍復帰は絶望的、と報じた。

   開幕投手から一転、2軍でメッタ打ち――。いったい斎藤投手に何が起きたのか。J-CASTニュースがスポーツジャーナリストの菅谷齊氏に聞くと、「決め球のスライダーで三振が取れないのが厳しい」と指摘した。開幕当初はそれでも相手打線を抑えていたが、各チームの打者が斎藤投手の投球に「慣れて」くると変化球を見極められ、スライダーを空振りしなくなった。直球が140キロ台前半と決して速いとは言えないだけに、これではピッチングの組み立ては苦しい。

   加えて、投球フォームが崩れていると菅谷氏は懸念する。2軍の投手コーチが斎藤投手にフォームの修正を助言すべきだが、「高校、大学とエリートコースを進み、プライドの高い斎藤投手が果たして2軍コーチの言うことを素直に聞き入れるだろうか」と懐疑的だ。コーチも、人気者の斎藤投手を故障でもさせたら一大事、という心理が働いて厳しく指導できないのではと推測する。

ポストシーズンで登板でも短いイニング限定か

   斎藤投手は来年25歳、チームを引っ張っていく立場の年齢になる。本格的にフォーム改造に取り組むとなれば時間が必要だが、若手投手が続々と伸びてくると先発ローテーションの「椅子」は奪われるだけに、悠長に構えてはいられない。自ら「負けず嫌い」と称し、2軍相手に炎上しても弱音を吐かずにプライドの高さをのぞかせるが、「崖っぷち」の今こそ周囲のアドバイスに耳を傾けたほうがよいと菅谷氏は話す。それほど事態は深刻とみているようだ。

   一方で球団側が、斎藤投手が進んで話を聞きたがるような「大物コーチ」を用意する手もあるだろう。「例えば、甲子園の優勝投手で巨人のエースを務め、大リーグも経験した桑田真澄氏。実績は申し分ありません」(菅谷氏)。巡回コーチのような名目を与えて、斎藤投手のフォームの指導に当たらせるというアイデアだ。

   斎藤投手は9月25日のイースタンリーグの試合で、横浜DeNAベイスターズのファームを相手に7回4安打無失点と久々に好投してみせた。日本ハムは「クライマックスシリーズ(CS)」に進出する可能性が高い。この投球内容が続くようならCS、さらには日本シリーズに向けて投手陣を整備したい首脳陣が1軍に呼ぶ可能性はある。「開幕投手に指名した栗山監督だけに、今も斎藤投手への『思い』はあるでしょう」と菅谷氏。ただ、仮にポストシーズンで登板させるにしても中継ぎで短いイニング限定、と予測する。根本的な解決が図られていない以上、短期決戦のシリーズで先発として使うには不安というわけだ。

   球界で生き残り、活躍するために大胆な「変身」が必要とみられる斎藤投手だが、年齢的に見て時間的余裕は限られている。入団2年目で、早くも重大な局面を迎えている。