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建設工事を再開した大間原発 「30年代稼働ゼロ方針」はウソだった

   大間原発(青森県大間町)の建設工事再開は、政府の2030年代稼働ゼロの方針と矛盾しているとの疑問が多い。立地などにも、問題が指摘されている。

   建設地は、「大間マグロ」で名高い漁業の町になっている。もし重大な事故が起きれば、おいしいマグロも食べられなくなる恐れがある。

電源開発社長「40年間は原発を動かしたい」

   大間原発は、4割ほど完成していたが、震災後は、安全確認の必要から工事がストップしていた。しかし、2012年9月14日に国の革新的エネルギー・環境戦略が決まり、建設中の原発にゴーサインが出たことから、事業主体の電源開発が10月1日、工事を再開した。同時に地元自治体にも、安全性などについて説明を行っている。

   原発については、国内で3基が建設中だが、再開は大間原発が初めてだ。震災前は、14年11月に営業運転を始める予定だったが、再開後の運転開始時期は未定だという。

   電源開発の北村雅良社長は1日の会見で、政府の原則にある通り40年間は原発を動かしたいとの考えを明らかにした。しかし、国の戦略では、30年代に稼働ゼロとする方針を掲げており、明らかに矛盾する。もし40年間動かすとすると、少なくとも50年代にはなってしまうからだ。

   さらに、周辺自治体との調整も難航している。建設地にある大間町の金沢満春町長は、再開を歓迎したものの、津軽海峡を挟んで向かいにある北海道では、反対が根強い。函館市の工藤寿樹市長は1日の会見で、最短で23キロしか離れておらず安全性に疑問があるとして、工事の無期限凍結を求めて13年春にも提訴する構えを見せた。

   安全性については、根本的な疑問が出ているようだ。

   週刊朝日は10月2日発売号で、大間原発の原子炉直下に活断層があるとの専門家の診断結果を報じた。

「(原発ゼロ)30年代は明確に決まったものでないと理解」

   記事によると、電源開発の調査では、活断層でなく古い時代の粘土質の地層とされたが、専門家は、その見方に疑問を呈した。また、大間原発沖の海底にも活断層があって、マクニチュード7級の地震を起こす可能性があり、もしそうなら原子炉直下の活断層も一緒に動くというのだ。

   一方、使用済み核燃料についても、問題点の指摘がある。

   大間原発は、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)の燃料を全炉心で使う世界初のフルMOX商業炉だ。しかし、京大原子炉実験所の小出裕章助教は、2012年9月20日放送の毎日放送ラジオ「たね蒔きジャーナル」で、使用済みMOXは発熱量が高くプールでの冷却にかなりの時間がかかると指摘した。

   以上のような疑問点について、どう答えていくのか。

   電源開発の広報室では、国の戦略との矛盾についてはこう説明する。

「2030年代というのは、明確に決まったものではないと理解しています。今後は、戦略に基づいて政策的な議論がなされると考えます。原発を止めることにならないよう、40年間は運転できる安全な発電所を作っていきます。原発は、国のエネルギー政策を考えるに当たって必要だと訴えるつもりです」

   また、週刊朝日の指摘には、「粘土質の地層は、新しい時代に変動がなく、変化も局所的ですので、活断層ではないと考えています。海底についても、地質調査などから活断層でないと分かりました」と反論した。

   使用済みMOXについては、「ウランなどと大きな違いはなく、プールに設計上の問題はないと確認しています。再処理工場は、今の時点では議論が止まっていますが、将来的には方向性が示されると考えています」と言っている。