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かんぽ学資保険認可の裏側 衆院選前に「郵政票」囲い込み思惑

   政府・与党は2012年11月27日、日本郵政グループの経営改革を検証する担当閣僚・幹部会議を開き、かんぽ生命が申請した学資保険の新商品を認可するかどうかを協議した。終了後、下地幹郎郵政民営化担当相は「条件付きで認可することを決めた」と述べ、30日にも関係閣僚会議で郵政民営化法に基づいて認可を出すとの見通しを示した。

   しかし、関係閣僚の一人である中塚一宏金融担当相は「慎重審査を続ける」と早期認可に改めて反対の姿勢を表明し、「閣内不一致」が表面化した形。裏には与党が苦戦する12月の衆院選を前に、「郵政票」囲い込みへの思惑もありそうだ。

金融庁は年内の認可見送りを示唆

   かんぽ生命の新たな学資保険は、現行の商品より死亡保障などの保障水準を引き下げる代わりに保険料を安く設定する保険。日本郵政は、傘下のゆうちょ銀行が申請している住宅ローンや法人向け融資と並んでグループの収益基盤拡大の目玉事業と位置づけている。実際の開始には日本郵政本体を所管する総務相による郵政民営化法に基づく認可と、金融商品を審査する金融相による保険法上の認可の2つの認可が必要になる。

   かんぽの新学資保険については、政府の第三者機関、郵政民営化委員会が11月22日に「問題ない」と容認する意見をまとめたばかり。しかし金融庁は、かんぽ生命で最近になって浮上した多額の保険金不払い問題を受けて、「内部管理体制を含めて検証し直す必要がある」(金融庁幹部)と年内の認可見送りを示唆する発言が出ていた。

   郵政グループの新規事業に対して、金融庁では以前から慎重論が強い。「企業向け融資などの審査能力や内部管理体制の整備が遅れ、将来的に大きな金融事故につながりかねない」との懸念があるためだ。かんぽの保険金不払い問題も、「年内の認可を断念させる切り札」(金融庁筋)として、同庁が郵政グループに公表させたのが実態だった。

今でも全国で数十万は下らないとされる郵政票

   ただ、金融庁を後押しするのは、「国の信用力を背景にした業務拡大は民業圧迫につながる」と郵政の新事業に抵抗してきた銀行や大手生保などの民間金融機関だけ。政権内では、樽床伸二総務相が民営化委の結論を受けて「11月中にも認可したい」と早々に早期決着を示唆するなど、容認論は郵政を支持基盤とする国民新党だけでなく、民主党内にも広がっている。

   全国特定郵便局長会やJP(日本郵政)労組などを合わせれば今でも全国で数十万は下らないとされる郵政票。樽床氏の地盤の大阪12区は、民主の樽床氏のほか自民、日本維新の会などの候補が入り乱れて苦戦を余儀なくされているだけに、郵政の神通力は絶大という見方もある。

   かんぽ生命は、学資保険の書き入れ時となる入進学時期の2013年4月までの新商品投入を目指す。パンフレット印刷などの準備があるため「遅くても年内の政府認可が必要」。だが、30日に郵政民営化法に基づく認可が下りたとしても、保険法上の認可がなければ商品は売り出せない。

   今回の認可をめぐるバトルの背景には10月の内閣改造がある。郵政グループの「応援団長」である国民新党は、改造で郵政担当兼金融担当の閣僚ポストを郵政担当兼防災担当に変更され、金融相ポストを失い、中塚氏が金融相に就いた経緯がある。

   元々、郵政担当相と金融相の兼務は「利益相反」(金融関係の学者)との批判も根強かった。一見、閣内不一致にも見える今回の論争だが「国民の前で堂々と議論するのは、密室で簡単に決まるよりよっぽどいい」(経済官庁幹部)と評価する声も聞こえる。