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毎日が社説で「新聞への軽減税率を」 露骨な「自公」推しに「恥知らず」の声

   「軽減税率で自公を評価」――。総選挙の投開票日を5日後に控えた2012年12月11日、毎日新聞はこうした見出しの社説を同日付朝刊に掲載した。

   税制面で新聞業界を優遇してくれそうな政党に対し、紙面を通じて露骨とも言える支持を表明したのだ。リベラルで庶民目線の紙面内容に定評があった毎日だけに、ネット上には「恥知らず」「ここまで主張がデタラメだともう読めない」といった強い批判が書き込まれている。

毎日「民主には再考を求めたい」

   毎日の社説は公示日翌日の12月5日付から「2012 衆院選こう考える」というシリーズを連載しており、11日のテーマは消費税だった。

   冒頭、消費増税する際の低所得者対策には「軽減税率」(複数税率)と「給付つき税額控除」があることを示した上で「われわれは軽減税率を採用すべきだと主張してきた」と切り出す。

   そして軽減税率は、「欧州で広く導入され」、「納税者に分かりやすく」「政策の恩恵を実感できる」とし、欧州で消費税引き上げがあまり抵抗なく実施できるのは軽減税率のおかげで、「これに学ばない手はない」とベタぼめする。

   だから、消費税を8%にアップする時点で軽減税率導入を主張する公明党に加え、軽減税率の導入に前向きな自民については「姿勢を評価したい」。一方、軽減税率に消極的で、給付つき税額控除の方がよいという考えの民主に対しては「再考を求めたい」と述べ、自公案支持を鮮明にする。

   続いて軽減対象品目の各論に入り、

「欧州では『食料』に加え『知識』への課税は避けるという考えが広く共有されている。新聞や書籍などが軽減税率の対象になっているのはそのためだ」
「活字文化や報道によって欧州の民主主義は支えられているという認識がある。それが『知のインフラ』への課税は避けるという思想につながった。日本でもそれが尊重されることを願う」

と「新聞除外」を強調する。

   実施時期については、自民の安倍晋三総裁が「デフレ下では消費税を上げるべきではない」と述べたことを批判し、国債累積の問題などから「経済状況がよほど悪化していない限り予定通り実施すべきだ」とクギを刺した。

   軽減税率を採用すれば増税分の約3割が減る、という指摘があることや、給付つき税額控除のほうが大幅に減収規模が小さい、という意見もあることには全く触れない。

「業界エゴが政治を歪める」

    読売、朝日と並ぶ「三大紙」とはいえ、毎日の朝刊部数は約340万部といわれ、他の2紙には大きく水をあけられている。消費増税が2014年から実施された場合、増税分を自社で負担すれば経営的に大きなダメージを受け、価格に転嫁すれば部数減は避けられない。

   毎日を含む各社にとって新聞代への軽減税率適用は「悲願」となっている。日本新聞協会は2012年10月16日、青森市で開かれていた第65回新聞大会で「知識への課税強化は民主主義の発展を損なう」と、新聞への軽減税率導入を訴える決議を採択しているが、選挙期間中に社説を利用してここまで露骨な世論誘導は異例だ。

   ツイッター上では、公明党の地方議員が毎日の社説を受けて「世論も公明党の見方」と投稿したものの、多くは厳しい意見で

「まさに業界エゴが政治を歪める」
「これは語るに落ちるだね。メディアの甘さと本音は透けて見える」
「毎日がここまで愚かだとは知らなかった」
「社会の公器を名乗る資格ナシ」

といった内容が相次いだ。

   新聞が必需品であるという甘えに言及したツイートも多く

「新聞は嗜好品だから増税」
「もはや新聞は必需品じゃなくて贅沢品」

などの声が寄せられた。

   ネットの掲示板には「【毎日新聞】消費税 軽減税率を検討している点で自公を評価したい 願わくば『新聞』も軽減税率の対象にしてほしい」というタイトルのスレッドが設けられ、

「私利私欲ために自分だけ減税しろってか」
「薄汚いというか、新聞にはプライドがないんだな」

といった冷ややかな書き込みが多数を占めた。