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原発再稼働、産業界が早くも「地ならし」 安倍政権への期待高まる

   安倍政権の誕生に、産業界で原発再稼働への期待が高まっている。自民党が圧勝したことで示された民意の一つが、原発再稼働の「容認」と受けとめているからだ。

   東日本大震災以降の電力不足や電気料金の値上げへの不安から、民主党の「原発ゼロ」政策にこれまで不満を募らせていた産業界だけに、再稼働に向けた「地ならし」が早くもはじまったようだ。

民主党政権では「絶望的」と思われていた

原発再稼働に向けて、産業界が「安倍政権」を後押し!
原発再稼働に向けて、産業界が「安倍政権」を後押し!

   自民党の安倍晋三総裁はかねてから「軽々に原発ゼロとは言わない」、「(政権を奪回すれば)政府が責任をもって(原発を)再稼働する」と発言。また、「2030年代の原発ゼロを目指す」とした民主党に対して、「代替エネルギーの確保が不透明なまま原発ゼロを進めるのは無責任」と批判した。

   そんな安倍総裁率いる自民党が福島県や福井県など、原発が立地する全国13選挙区のうち11選挙区を制した。民主党の「脱原発」や日本未来の党の「卒原発」は、耳あたりはよいが、結果的には有権者に受け入れられなかったわけだ。

   こうしたことから、燃料コストの増加に伴う電気料金の値上げなどに苦しんでいる産業界でも、民主党政権では「絶望的」と思われていた原発再稼働が、「安倍政権」の誕生で動き出すとの見方が急速に広がってきた。

   解散総選挙が決まった直後、「自民党のほうが民主党より私たちの考えに近い」と暗に自民支持の考えを示していた電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は2012年12月17日、自民党の圧勝を受けて「与党がリーダーシップを発揮して重要政策を進めてほしい。とくにエネルギー政策は長期的な視点で推進する必要がある」とコメント。「原発ゼロはあまりにも課題が多い。現実的な政策とするため、新政権に見直しをお願いしたい」と求めた。

   三菱重工業の大宮英明社長も同日、ロイター通信のインタビューで「安全性を最優先としつつ、稼働できる原発は再稼働していくことが資源の乏しい日本にとって現実的」と、「再稼働」を後押し。安倍政権には「原発、再生エネルギーなど最適な電源を組み合わせた具体的なエネルギー政策を示してほしい」と要望した。

まだ残る再稼働への「不安」

   米倉弘昌会長が「自民党の圧勝を歓迎する」と手放しで喜んだ、日本経済団体連合会は2012年12月18日、「エネルギー政策の再構築を求める」提言を発表。民主党政権の「革新的エネルギー・環境戦略」を見直し、「電力の供給不安を解消し、価格上昇圧力を抑制するためには、安全性の確認された原発を地元自治体の理解を得て再稼働していく必要があり、そのための道筋を早急に明示すべきである」と、注文した。

   とはいえ、原発の再稼働をめぐるハードルは低くない。自民党と連立を組む公明党が「速やかな原発ゼロ」を主張。また自民党内にも「原発ゼロ」を求める声がくすぶっている。

   原発再稼働について、自民党は電源構成の最適な組み合わせを遅くとも10年以内に確立し、「すべての原発について3年以内の結論を目指す」としている。

   「柔軟に考えていく」(安倍総裁)といえば聞こえはいいが、確固たるロードマップが定まっているわけではない。しかも、原発の安全性については独立した規制委員会による専門的な判断を最優先し、再稼働の可否も規制委員会に委ねている。

   産業界としては、いつまた「脱原発」の風が吹かないうちに、急ぎ再稼働への道筋をつけてしまいたい思惑もありそうだ。