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安倍氏、IT企業と急接近 三木谷「新経連」の重み増す

   安倍政権の誕生で、政界とインターネット企業との「距離」が急速に縮まっている。

   楽天の三木谷浩史社長が代表理事を務める新経済連盟(新経連)は、同社やサイバーエージェント、ミクシィ、グリーといったインターネット関連企業で構成する会員数779社の経済団体。自民党の安倍晋三総裁はフェイスブックの積極的な利用で知られ、ネットには理解があるとみられるだけに、両者の接近ぶりが目立っている。

新経連、当面の「課題」をクリア

IT企業などの「新経連」は、安倍政権との距離を縮めようとしている。
IT企業などの「新経連」は、安倍政権との距離を縮めようとしている。

   新経連は、「eビジネス推進連合会」が2012年6月1日に改称して発足。立ち上げ当初から、米国などでは当たり前になっているネット選挙活動については解禁を、また医薬品の通信販売規制などインターネット利用に対する規制に対して反対を表明。「インターネットの規格をグローバルスタンダードにしていく」ことを掲げていた。

   12月21日に行われた安倍総裁と三木谷氏の会談で、ネット選挙の早期解禁を要請した三木谷氏に、安倍総裁は2013年夏の参院選までに、ネットでの選挙運動を規制する公職選挙法の改正を目指す考えを示した。

   現行の公選法は、ホームページやブログ、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)での選挙運動を認めていないが、政治活動と選挙運動の線引きは曖昧なままだ。

   ネット選挙の解禁は、自民、民主、みんな、社民などの各党が衆院選の選挙公約に盛り込んでおり、13年の通常国会で公選法の改正が実現する可能性が、にわかに高まってきた。

   三木谷氏は環太平洋経済連携協定(TPP)の早期交渉参加についても要請。ただ、安倍総裁はこれについて言及を控えた。

   一方、安倍総裁は三木谷氏に「日本経済再生本部」などへの参加を求めたとされる。

   また、ネット医薬品の販売をめぐる裁判は国の敗訴が確定する見通しが強まった。医師の処方箋なしで購入できる一般用医薬品(市販薬)のネット販売に対する国の規制は違法、無効として、「ネット薬局」が販売する権利の確認などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は、12月21日に判決期日を13年1月11日に指定。2審を見直す際に必要な弁論を開いておらず、販売権を認めて国側の逆転敗訴とした2審・東京高裁判決が確定する見通しだ。

   新経連にとって、当面の課題としていたネット選挙と市販薬のネット販売が可能になりそうで、大きな一歩になる。

経団連・米倉会長と安倍総裁はぎくしゃく?

   日本経済団体連合会も安倍政権の誕生を機に、政府との関係を再び強化しようと動いた。2012年12月18日、経団連は安倍総裁を招き、民主党政権下で中断していた政治家と直接対話する「政経懇談会」を再開した。

   しかし、この懇談会に米倉弘昌会長は風邪による体調不良で欠席。TPP交渉への早期参加の表明や円高是正、原発の再稼働、日中関係の改善など、安倍総裁へ「直談判」したいことは山のようにあっただろうが、そうはいかなかった。

   そもそも、米倉会長は衆院選中の12月10日の記者会見で、安倍総裁がテレビ番組で消費増税に慎重と受け取れる姿勢を示したことを批判していた。12日に米倉会長が「おわび」の電話を入れるなど、ぎくしゃく。25日にようやく、衆院選後初めて安倍総裁に直接会って事情を釈明し、謝罪した。

   一方、楽天も2011年に「原発再稼働」を求める経団連に対して「意見が合わず」、経団連を脱退した経緯がある。

   「オールドエコノミー」の経団連に対して、インターネットをもっと積極的に、国家的に活用していくことを提唱する新経連。財界では新興勢力の扱いにとまどっていたが、安倍・自民党の圧勝で一気に政権との距離を縮めようとしていることは確かなようだ。