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雑誌電子版が「紙版」より高額な米国 日本でもそんな日がやってくるのか

   米国では、雑誌を定期購読した場合に「紙版」よりも「電子版」の料金が上回る例が出始めた。出版社側の価格設定によるものだという。

   日本国内では、類似の例はわずかなようだ。だが紙版で定期購読割引を適用する半面、電子版は同様のサービスを提供しないために価格の「逆転現象」が起きているケースが見られた。

長年続いた購読料の割引競争を食い止めたい米出版社

   米ウォールストリートジャーナル(WSJ)電子版2013年1月18日付の記事では、女性誌「コスモポリタン」の紙版と電子版を比較している。それによると年間購読料は、紙版が初年度10ドル(約900円)なのに対して電子版が19.90ドル(約1790円)とほぼ倍額になるというのだ。

   コスモポリタンのウェブサイトで確認したところ、紙版の価格は1年契約で15ドル、2年契約で28ドル、3年契約36ドルと期間が長いほど割安になっていた。一方の電子版は「12冊で15ドル」となっている。1年間で換算すると紙版と同額だが、2年より長期契約した際に値引きされるかどうかは明示されていない。WSJの記事内容とは若干違うが、電子版で2年以上の長期契約で値引きが適用されなければやはり紙版の方が安くなる。

   米国の雑誌は、書店やスーパーなどで1冊購入するのと比べて定期購読した方が、1冊あたりの値段は圧倒的に低価格だ。コスモポリタンも店頭で買えば4ドルほどかかるが、年間購読した場合は1冊あたり1.25ドルとなる。WSJが書いたように「年間10ドル」ならば1ドルを切る。電子版が紙版の購読料を上回る点についてWSJでは、出版社側に、長年続いてきた購読料の割引競争を食い止めたいとの期待があると指摘。コスモポリタンを発行するハースト社副社長が今回の措置について、紙版購読料を年間6、7ドルに抑えざるを得ない事態を終わらせたいと希望している趣旨の発言を引用した。

   一方で、縮小し続ける雑誌の広告収入への依存度を減らし、電子版の購読料を収益の柱に育てたい思いもあるようだ。紙版と電子版をセットにして販売し、その購読料を値上げする出版社も現れた。WSJによると出版社は広告主と「一定読者の確保」を約束するため、安易に値上げして読者離れを起こすわけにいかず、逆に大幅値下げで購読者を増やす道を選ばざるをえなかったのだという。広告減により出版社としても、広告主の意向を気にせず電子版の価格アップに踏み切れるようになったのだろうか。

国内の雑誌広告費は「右肩下がり」

   国内でも米国と同じようなことが起きているのだろうか。オンライン雑誌販売サービス「Fujisan.co.jp」で、紙版と電子版の購読料の違いを調べた。

   例えば「週刊東洋経済」の場合、1年50冊の定期購読で紙版2万7200円、電子版2万4000円となっている。ほかにも「ニューズウィーク日本版」や「週刊朝日」、ファッション誌「ヴァンサンカン」をはじめ、年間購読した場合は電子版の方が紙版よりも安い雑誌が今も多数派のようだ。

   これに対して「プレジデント」やサッカー誌「フットボリスタ」のように、年間購読で紙と電子が同額というケースもあった。電子版の方が明確に割高に設定されていたのは「文藝春秋」だ。また紙版を定期購読すると割引価格が適用されるが、電子版には値引きなしのため、計算すると結果的に電子版が高くなる雑誌もある。

   例えば毎日新聞社発行の「エコノミスト」は、紙版を年間49冊契約で17%割引が受けられるため、購読料は2万6500円だ。ところが電子版には同様のサービスがサイト内に見当たらない。1冊600円の電子版を49冊購入すると2万9400円と紙版の価格を超える。「日経ウーマン」も同じく、紙版12冊を年間購読すると6300円、これに対して電子版は1冊550円で、12冊購入で6600円となる。WSJが指摘したコスモポリタンのように、出版社側が電子版を「割高設定」したわけではないようだが、紙版より高くなるのは事実だ。

   電通が毎年発表する「日本の広告費」を見ると、雑誌広告費は直近となる2011年で2542億円だが、過去数年間は「右肩下がり」で落ち込んでいる。日米では事情が違うとはいえ、広告収入に厳しさが増しているのは共通しているようだ。国内でも米国のように今後、電子版による購読料収入のテコ入れのために出版社が値上げに動く可能性もあるだろう。