J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

文化庁配信電子書籍でダウンロード数トップ 「エロエロ草紙」の中身は「男子の妄想」

   文化庁が実験的におこなっていた電子書籍配信事業で、「エロエロ草紙」なる書物がダウンロード数ダントツのトップを記録した。

   夏目漱石、芥川龍之介をはじめ多くの文豪作品を抑えたこの作品、いったいどんなものだったのか。

1930年に「公序良俗を乱す」と発禁処分受けた

   文化庁は2013年2月1日から、「文化庁eBooksプロジェクト」として、国立国会図書館のデジタル化資料のうち、有識者により選定された13作品を電子書籍化・実験的に配信していた。配信は3月3日に終了し、実験結果が9日に公表された。

   それによると、配信期間中のダウンロード数1位は酒井潔の「エロエロ草紙」で1万1749件、2位以下に芥川龍之介の羅生門(1万163件)、同じく芥川の「河童」(8428件)が続いた。このほか「絵本江戸紫」(1765年)、「平治物語〔絵巻〕」(1798年)などの古典籍や、竹久夢二、柳田國男、夏目漱石、永井荷風、宮沢賢治などの作品が配信されていた。

   これらそうそうたる「ライバル」を押しのけて、今回1位に躍り出た「エロエロ草紙」。そもそもなぜラインアップされたのか。

   1930年11月に出版されるはずが、「公序良俗を乱す」との理由で製本中に発禁処分を受けた。その後長らく日の目を見ていなかったのだが、国立国会図書館デジタル化資料としてインターネット上に公開されると、その「露骨過ぎる」タイトルがネット住民から「人気」を集め、11年中ごろからサイトのアクセス数ランキング首位に君臨するようになった。

   このデジタルデータのアクセス数や、国会図書館内での閲覧実績などを重視して、文化庁が配信ラインアップを絞り込んだため、「エロエロ草紙」には異論も出たものの、「やはり外せない」となったそうだ。

   今回、電子書籍でも1位を獲りいわば「二連覇」したことを受け、「これはもうタイトルの時点で勝ちだろ」「タイトルに惹かれたものと思われる」「エロの力を再確認」「噴いたw ベータ対VHSもそうだったが、やはりエロは強いなw」との感想がツイッターなどであがっている。

著者「上品なエロと、朗らかなナンセンス」

   いったいどんな内容なのか。作者みずから巻末で「上品なエロと、朗らかなナンセンス、即ちウルトラ生活の二要素を具備するもの、此の書を見て、不感性(編注:ルビ、インポテンツ)なる者はおよそ退屈の権化として、怨霊退散である」と解説している。

   ページを繰ると、ところどころある口絵の女性は、ほとんど胸元をはだけているものの、たとえば春画のように露骨にいかがわしい描写はない。それよりも「エロ・オリンピック」といった直球のタイトルが笑みを誘う。ナンセンスで少しエロチックな漫画と文章を中心に、現代青年はいかにエロに取り組むべきか、エロにまつわる翻訳小話、男女間の「あるあるネタ」などの読み物が収まっている。

   たとえば、「現代青年作法心得 週末休暇の巻」の一部はこんな調子だ。

「現代の青年は週末休暇は必ず十八才の令嬢のある先輩の別荘で楽しく暮らさねばならぬのである(…)令嬢の隣室へスーツ・ケースを投げ込んだら、すぐ素裸になって、現代スポーツ青年のチャンピオンたることを誇示するために、令嬢の部屋の前の廊下を五十度ほど、八百メーター競争ほどの速さで駈足をするのである。令嬢が聾でない限り、きつと君のすばらしいフォームを覗くに違ひない(…)寝る時になったら、君はパジャマ一枚になって令嬢の寝室のドアーを静かに開けて、パンクロ的の絶対に擦り切れない男性の肉体が御入用でないかどうかを聞くべきである。それから、玄関の硬い敷石の上へ、執事や下男の手によってフットボールの様に蹴出されて其の上へ、スーツ・ケースを投げつけられ三分間ほど気絶すべきである」

   オチまでついたいかにも「男子の妄想」「健康的なお色気」といった内容に、「戦前だからだろうけど、全然エロくないです」と落胆する感想も一部では出ている。