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「今のままではマスコミは不要に」「参院選では『ネット専用』候補も」
ネット時代の政治、自民・平将明氏に聞く

   本質的な政策論議をなおざりにし、あるいは歪曲し、ただいたずらに「政局」を追うばかり。ときには特定の方向に世論を導こうとする意図さえ見え隠れする――新聞・テレビなどマスコミの「政治報道」に近年、そんな批判と不満が大きくなっている。一方でネットの普及により、政府や役所、政党、政治家、関係団体、さらには学者や一般の有権者も含めて、様々な立場の人がマスコミのフィルターを通さず自由に、直接情報を発信したり、受信したりするようになった。この夏の参議院選挙では、インターネットを使った選挙運動がスタートする見通しだ。

   「ネット選挙解禁」によって、日本の選挙や政治報道はどう変わるのか。J-CASTニュースは2013年3月7日、自民党の前情報調査局長で「ネット選挙」推進派の論客として知られる平将明・経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務官(46)に議員会館でインタビューした。これまでにも既存マスコミの政治報道に批判的な見解を示してきた平氏は、ざっくばらんな口調で、政治家の側から見た「政治報道」の現状、そしてこれからの展望について語った。

「人間関係」にしか興味がない政治記者

3月7日、議員会館でインタビューに応えた平将明氏。これから重要なのは、「ネットが社会にもたらす変化を想像できるかどうか」と語った
3月7日、議員会館でインタビューに応えた平将明氏。これから重要なのは、「ネットが社会にもたらす変化を想像できるかどうか」と語った

――マスコミによる現在の「政治報道」をめぐる状況をどう見るか。

 政治記者は、政治家同士の人間関係、もっと言えば裏に隠れている愛憎劇みたいなのが好きでさ。こちらが政策論議をしていても、結局は人間関係に基づく「政局」にブレークダウンしてしまう。テレビや週刊誌はさらにそれを面白おかしく描いて、最後にコメンテーターが「政治家は政局にうつつを抜かさず、もっと政策を議論してほしいものですよね」とため息をついて終わり。こちらはいつも「不毛だなあ」と思ってるわけですよ。
   あと新聞各社は政治家の発言の内容を、記者同士が確認し合ってるよね。だから新聞の中で「構造」が共有されちゃってお互いに修正する力もないし、しかも刻一刻と変わる政治の状況を、一度作ったその構造の中に押し込めようとする。そうして、どんどん本質と離れていっちゃう。

――それがネットの普及で、風向きが変わってきた。

 今はさ、当事者の政治家がツイッターなんかで直接発言しちゃって、記者より早いわけよ。だから、今までの報道はどんどん陳腐化していくし、速報性も落ちてきますよね。読者も記事を読むより、ツイッターでキーパーソン抑えておけばいいってことになる。マスコミはこれまでは他社との戦いだったのが、全然違うライバルが出てきた。公の場での発言にしても、今やノーカットの動画が簡単に見られるようになって、真意が伝わりやすくなってきた。
   そうなると国民の側にも流れてくるものをただ受け取るのではなく、ネットの中で自ら情報を取捨選択して取りに行く人が増えてくる。そういう人と、いまだにテレビなどから極端に加工されたものを受け取っているだけの人とでは、考え方も変わってくると思う。そうすると新聞社やテレビ局が縦横のつながりで世論を作ろうとしても、なかなかできないですよね。
   だからマスコミはこれから大変だと思うよ。経営も含めて、どんどん厳しくなってくる。

――一方でマスコミが安易に「政局」報道に走るのは国民のリテラシーの問題もあるのでは。

 確かにこれまではネットを通じた情報発信・情報収集という仕組み自体がなかったから、そういう状況が生まれていた。たとえば「なんで何もわからないタレント議員を出すんだ」って政党はバッシングされるけど、だって受かるじゃん。求めている国民がいるから政党はやるわけよ。マスコミがあれだけ「堕落」しているのも、ある意味でそれを求めている人がいるからだと思うんだよね。
   でも環境が整えば、クオリティーが高くなってくるという気がしますね。やっていくうちにリテラシーも上がっていくんじゃないかと思います。

――マスコミにはどのような変化が求められるか。

 まあ、今と同じようなことやってるようでは「いらない」と思うな。政治家自身がネットで情報発信をしていく時代に、どう立ち位置を取るか。ネットと連携するか、あとは自分の意見を発信していくことだろうなあ。そうすると価値が出てくると思う。

ネット世論を吸い上げる候補者が必要

――既存マスコミの政治報道を批判する一方、平氏は積極的にツイッターを活用している。

 政治家としては今やツイッターは欠かせないよね。単に情報発信のツールと思っている人が多いけど、自分は情報収集に活用している。たとえばある事件が起きたとき、ツイッターを見れば、1つのニュースへのいろんな見方を瞬時に集められるわけじゃない。
   もちろんデマや極端な発言もあるし、俺なんかもボロクソ言われるわけ。でもデマや変な情報が流れても、新たな情報がそれにかぶせられていくことで、間違いや変な情報を自ら修正する力をツイッターは内部に抱えているよな。3・11のときにそれを肌で感じた。
   一方で僕ら政治家に要求されるのは、140文字で言いたいことをまとめる力。連続ツイートはダメ。最近僕も経験したけど、都合よく一部だけを取り出されて、ネガティブキャンペーンに使われちゃう。

――ネット時代、報道だけではなく政治家にも変化が求められるのでは。

 政治家より、まず変わらなければいけないのは政党。今考えてるのは、次期参院選にたとえば自民党から1人実験的に、全国区で「ネット専用」の候補者を立てること。たすきかけて演説したりポスターを貼って回ったりする代わりに、選挙期間中ツイッターやフェイスブックで有権者からの質問に常時答えたり、その日の行動を動画で流したりと、選挙運動の比重をほとんどネットに置く。今、党幹部とも話してます。
   既得権益の代表者でもない、タレント議員でもない。ネット上の「ゆるやかな連帯」「ゆるやかなグループ」の世論を代表し、ニーズを吸い上げる候補者。それをどうピックアップするか。政党の側が頭を柔軟にしなくてはいけない。ネットが社会にもたらす変化を想像できるかが問われるな。
   時代の変化に対応できなければ、自民党もすぐなくなっちゃうから。なくなるとは言わなくとも、一気に力を失っちゃう。与党だからといってその座に安住するのではなく、野党よりも常に先を行かないと。

<平将明氏 プロフィール>

   たいら まさあき 1967年生まれ。早稲田大学法学部卒業。サラリーマン生活、家業の青果仲卸業、東京青年会議所理事長などを経て、2005年に衆院初当選。現在3期目(東京4区)。党情報調査局長などを務め、現在は経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務官。ネット選挙推進派として知られ、ネットと政治に関するフォーラムなどにもたびたび登場する政界きってのネット通。
   著書に『超現場主義-超現場主義中小企業金融論:役人、学者、銀行員…エリートにはわかるまい!』(カナリア書房)。