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「東大合格に『母は無職』有利」 これは本当なのか

   「東大合格には「母は無職」がいい?」――週刊朝日2013年4月19日号がこんな見出しの記事を掲載した。2013年度東京大学入学者152人に対して独自におこなったアンケートによると、東大生の母親は「無職」、すなわち専業主婦であることが多かったという。

   時間に余裕のある母親のサポートで難関の中高一貫校に入学でき、それが東大合格につながっているのではないかというのだ。

低収入の家庭の子が合格できないというわけではない

   実際のところどうなのか。ベネッセの「高等教育研究所」大学進学アナリスト・村山和生氏は2013年4月15日、J-CASTニュースの取材に対して、「結果的に専業主婦家庭出身が多いという現象について違和感はない」としつつも、「専業主婦がいることで有利になることはないのではないか」との見方を示した。

   その鍵となるのは「親の収入」だ。男性が高収入だと、専業主婦を養ったり、子どもに教育費をかけたりといったことが可能になる。このため、結果的に、東大にお金持ちの子どもが集まってしまうのだという。東大生に都内の難関中高一貫校の出身者が圧倒的に多いことや、東大生の親の平均年収が1000万円以上であることはよく知られている。

   一方で村山氏は「結果的に高収入の家庭の子が多くても、低収入の家庭の子が合格できないというわけではないです」とも指摘する。

   東大の合格者を見ていると、親のサポートももちろん必要だが、本人が主体的に学べているかのほうがより重要だという。

「実際、中高の指導場面を見ていても、中学受験とは違いますよ」

東大は学生に「タフさ、多様性、主体性」求める

   さらに、村山氏はこう指摘する。

「この春の入試もそうですが、東大の前期入試の個別学力検査(二次試験)は『難問・奇問ばかりで、塾や予備校で特殊な解法の訓練などの対策をしなければいけない』と思われがちですが、実は日々の学校の授業や、教科書の内容を本質的に理解し、深く考えていれば解けるような問題、構成になっています」

   また、勉強の具体的な進め方などについても、

「保護者に相談するよりは学校の先生などに相談したほうがいいのではないでしょうか」

といい、やはり東大入試への親の関わりは、本人が主体性を持って取り組んでさえいれば、そこまで大きくないのではないかと話していた。

   東大のほうでも、学生の出自が中高一貫校に偏ってしまうことに危機感を抱いているようだ。濱田純一総長のもと、東大は学生に「タフさ、多様性、主体性」を求めて、さまざまな改革をおこなっている。先ごろ発表された2016年度入試からの推薦導入などの改革も「多様性」の確保を目指したものだという。