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住宅ローン金利、「固定型」の借り入れが急増 「変動」からの借り換えも目立つ

   銀行の住宅ローン金利が上昇している。メガバンクでは2013年5月に続いて6月も、主力の10年固定金利型(最優遇金利)で0.2%引き上げて、年1.6%程度とする見通しだ。

   歴史的にみればなお低い水準だが、4月の日本銀行による「異次元の金融緩和」以降に急上昇している長期金利は5月23日には一時1%を付けた。先行き不透明で、住宅ローン金利は「まだ上がるのではないか」という不安がある。

12年12月が最低水準だった……

固定金利型の住宅ローンを選ぶ人が増えている。
固定金利型の住宅ローンを選ぶ人が増えている。

   三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンク3行が、2013年6月1日の新規実行分から住宅ローン金利を引き上げる。指標となる長期金利が上昇しているためで、2か月連続の引き上げだ。

   主力の10年固定金利型(最優遇金利)は年1.6%で、11年9月以来の高い水準となる。0.2%の上げ幅は、5月の0.05%より広がった。一方、短期金利に連動する変動金利型住宅ローンの金利は据え置く。

   銀行などの住宅ローンは、5月には住宅金融支援機構の「フラット35」(全期間固定金利)でも、返済期間21年以上35年以下で0.01%上昇したが、インターネット専業の住信SBIネット銀行など一部では据え置いていた。

   しかし、6月はそうはいかなくなった。日銀は短期金利だけでなく、長期金利の押し下げを目指して「異次元の金融緩和」に踏み切ったが、長期金利は4月の金融緩和直後に0.3%台に下がったものの、4月末には0.6%、5月23日には一時1年2か月ぶりとなる1%まで上昇した。

   「5月は戦略的に据え置いた」(10年固定型で年1.15%)という三井住友信託銀行も、6月は0.3%引き上げ年1.45%とする。住信SBIネット銀行も「5月の水準(10年固定型、年1.18%)に据え置くことはない」という。

   その一方で、地価の上昇気配や消費増税の駆け込み需要から住宅の購入意欲は高まりつつある。大手銀行の住宅ローンは12年12月に、10年固定型で年1.3%の過去最低水準となった。そのことで、「金利が上がらないうちに住宅ローンを組んでおきたい」という消費者心理が働きやすくなったうえ、「異次元の金融緩和」の影響で長期金利の急上昇が加わり、住宅ローンの金利負担が増えることへの不安がかき立てられたようだ。

アベノミクスで顧客の心理に変化

   長期金利の先高観が強まったことで、最近は固定金利型住宅ローンを選ぶ人が増えている。

   あるメガバンクは、「2012年10~12月期と13年1~3月期と比べると、固定金利型を選ぶ人の割合が増えてきました」という。窓口では、変動金利型から固定金利型への借り換えの相談も増えた。

   住信SBIネット銀行は、2013年5月の住宅ローンの申込件数は「前年に比べて倍増しそう」とし、「申し込みの7割が固定金利型住宅ローンを選んでいます」という。「昨年の今ごろは申し込みの7割が変動金利型を選んでいました。固定金利型を選ぶ人が増えてきたのは、やはりアベノミクス以降ですね」と話している。

   5月のメガバンクの最優遇金利は10年固定型で年1.40%。変動金利型は1%を割る0.875%だ。「変動金利とほぼ同じ水準ならば、固定金利にしたほうが安心」という声は少なくなく、そうしたことから、「借り換えるなら今」との考えも広がってきた。

   たしかに、変動金利型は半年ごとに金利が変わるので、返済額は一定ではない。ただし、毎月の返済額が変わるのは通常5年ごと。半年に1回変わるのは、返済額に占める利息と返済元本の割合、つまり利息の負担額になる。

   もちろん、金利が上昇すれば返済負担は増す。とはいえ、変動金利が上昇するときには、固定金利はさらに高い水準にあるケースがほとんどだ。