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アノニマスが政府サイト攻撃、退陣要求 イスタンブール騒乱、現地ネットで「空中戦」

   トルコのイスタンブールで発生した反政府デモが長期化の様相を見せるなか、ネット上の「空中戦」も活発化してきた。国際的ハッカー集団「アノニマス」とみられる集団が政府関係のサイトを攻撃。ツイッターは、新政府派と反政府派の両方に積極活用されている。 また、保守派の新聞は「ソーシャルメディアでデマが拡散している」などと報じており、騒動の早期鎮静化を図りたい考えのようだ。

市営バスを破壊しATMから現金を盗む

「アノニマス」を名乗る集団が公開した犯行予告ビデオ。この翌日に政府関連サイトがつながらなくなった
「アノニマス」を名乗る集団が公開した犯行予告ビデオ。この翌日に政府関連サイトがつながらなくなった

   デモは2013年5月31日、中心部のタクシム広場に隣接する公園の取り壊し計画に反対する市民の集団を機動隊が強制的に排除したことがきっかけで広がりを見せた。タクシム広場周辺は数千人のデモ隊が占拠し、機動隊はデモ隊に放水したり催涙弾を発砲するなどしている。イスタンブールの日本総領事館がウェブサイトに掲載している「緊急治安速報」によると、デモ隊は市営バスを破壊してバリケードにしたり、ATMを破壊して現金を奪うなど、暴徒化の様相を呈している。

   そんな中、ネット上での戦いも激化しつつある。6月2日には、国際ハッカー集団「アノニマス」を名乗るインターネット利用者が、犯行予告動画を公開。

「トルコは、いわゆる近代的な民主主義国家だと思われているが、トルコ政府は中国やイランの下らない独裁者のように振る舞っている。アノニマスはこの行動に憤っており、世界中のアノニマスが団結してトルコ政府を屈服させる。トルコ政府の全てのインターネットと通信設備に攻撃を加える」

と警告した。翌6月3日には犯行予告が実行に移された模様で、アブドゥラー・ギュル大統領、与党の公正発展党といった政府与党関連の公式サイトが相次いで攻撃を受け、つながらなくなった。トルコの一部メディアのウェブサイトも「事態を十分に報じなかった」として同様の攻撃を受けた。

反政府派と政府擁護派のハッシュタグが登場

   ツイッターの書き込みも活発だ。今回の騒乱をめぐってよく使われているハッシュタグが、「tayyipistifa」(「エルドアン首相辞めろ』の意)「OyunaGelmeTurkiyem」(「騙されるなトルコ』の意)のふたつ。前者が機動隊の横暴ぶりと政権打倒を訴えているのに対して、後者は

「エルドアンは独裁者ではない。民主的に選ばれたリーダーだ」
「国を不安定にしたい人がいる」

といった政権を擁護する声が多い。

   デマも多く指摘されている。保守系でイスラム色が強いとされる大手紙「ザーマン」では、少なくとも(1)著名なコラムニストが、機動隊がデモ隊に向かって至近距離から催涙スプレーを噴射する写真を投稿しているが、写真が撮影されたのはトルコではなくボストンだった(2)「デモが48時間以上続いた場合、憲法裁判所が政府を転覆させる」といううわさが流れているが、トルコにそのような法律はない(3)保健相を名乗る者が「政府と警察に抵抗すれば病院送りになるだろう」とツイートしているが「なりすまし」に過ぎない、といったデマが流れたことを指摘している。

   その上で、

「タクシム広場を、エジプト革命のきっかけになったタハリール広場になぞらえるツイッター利用者もいる。ソーシャルメディア利用者の中には、機動隊との衝突で多数が死傷した主張している。タクシム広場のデモをめぐって、500万以上の誤解をまねくツイートが投稿されたとみられている」

とデモ隊のソーシャルメディア活用を批判した。