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牛丼戦争、5月は吉野家に軍配 客数30%伸び、2カ月連続の売り上げ増

   吉野家ホールディングスが展開する牛丼チェーン「吉野家」の2013年5月の既存店売上高は、前年同月に比べて15.9%増と2か月連続で前年を上回った。4月18日に牛丼(並)を380円から280円に値下げした効果で客数が伸びた。

   一方、ゼンショーホールディングスの「すき家」と松屋フーズの「松屋」は、吉野家にお客を奪われたようで、売り上げを減らした。

「すき家」「松屋」牛丼値下げ「考えていない」

5月は吉野家が売り上げを伸ばした。
5月は吉野家が売り上げを伸ばした。

   「吉野家」が売り上げを伸ばした要因には、牛丼の値下げがある。それにより、客数が31%伸びた。吉野家HDは「まずは客数アップに力を入れた成果がありました」と、喜ぶ。

   ただ、客数が大幅に伸びた半面、値下げした牛丼(並)に注文が集中したことで、客単価が11.5%下がった。

   同社は6月1日から夏季限定で「鰻丼」の発売を開始。並盛りで680円と、前年より30円値上げしたが、牛丼の値下げで来店したお客を「鰻丼」や他のメニューに誘導して、客単価を徐々に引き上げていく作戦。「(鰻丼の)滑り出しは好調です」と、客数と客単価の両方のアップを狙う。

   対抗する「すき家」と「松屋」は先行して牛丼(並)を280円で販売してきたが、苦戦を強いられている。「すき家」の5月の既存店売上高は、8.8%減と21か月連続でマイナス。客単価は0.2%減とほぼ前年並みだったが、客数が8.6%減少した。

   ゼンショーHDは、「なんとか客数を伸ばしていきたい」という。「特効薬はないと思っています。きれいなお店と接客、おいしいメニューということを地道に積み重ねるしかない」と話す。

   牛丼の価格については、「(280円は)十分バリューがあると考えていますし、利益に貢献できる価格です」と説明。値下げは「考えていない」としている。

   「松屋」も8.1%減と、14か月連続で前年を下回った。客数が11.6%減少。しかし、客単価は4%増えた。「(吉野家に)お客が流れた可能性はあります」と否定しないが、牛丼の値下げは「現状、ありません」という。

   客単価が伸びた要因について、松屋フーズは「前年同月に、単価の低い丼メニューが多く売れたことがあります。また、この5月は単価の高い定食の新メニューを用意。牛丼やカレーのお客様が、定食メニューに流れたことがあります」と説明する。

   ただ、「客数の落ち込みが… やはり客数と客単価のバランスをもっと考えていかないと」と、客数アップに頭を捻る。

輸入牛肉の仕入れ価格、円安で思うように下がらず

   吉野家HDが牛丼(並)を100円値下げして280円にしたのは2013年4月18日。この価格は、キャンペーンを除けば1990年の株式上場以降で最低。2004年にBSE(牛海綿状脳症)問題で牛丼販売を休止する直前の水準だ。

   競合するゼンショーホールディングスの「すき家」、松屋フーズの「松屋」と同じ価格帯となったことで牛丼戦争が再び勃発。集客競争はますます厳しくなった。

   吉野家HDが値下げに踏み切った背景には、2月の米国産牛肉の輸入規制緩和で、仕入れ価格の値下がりが見込めることがある。輸入対象の月齢は「20か月以下」から「30か月以下」に広がり、調達量が拡大。飼育期間が長くなることで、従来の牛肉より脂身が増え牛丼の品質も向上する、という。

   ただ、「アベノミクス」による円安で、海外からの牛肉仕入れ価格は計算どおりには下がっていない。牛丼を値下げしたことで利益率は、むしろ抑えられている。