J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

13年夏参院選 野党はいま
最大争点「アベノミクス」 野党はどう見ているのか、どこがいけないのか

   参院選での優勢が伝えられている自民党の原動力のひとつになっているのが「株高」だ。それを下支えしていると主張されているのが「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」のアベノミクス「3本の矢」だが、野党からは「副作用」を指摘する声も多い。野党はアベノミクスのどのような点を批判し、どのような対案を持っているのか。2013年7月21日の投開票日を直前に控え、検証してみた。

   J-CASTニュースでは主要野党に取材を申し込み、日本共産党が対面インタビューで、民主党、みんなの党が書面での取材に応じた。

共産党「国民の所得を減らして奪うものばかり。『アベノミクス』ではなくて『アベコベミクス』」

アベノミクスで景気はどうなるか(写真はイメージ)
アベノミクスで景気はどうなるか(写真はイメージ)

   総論としては、民主党は

「賃上げ無き物価上昇、格差の拡大、国債の金利の乱高下などの副作用が生じています」

と副作用を指摘。みんなの党は、規制改革が不十分なことを、

「古い自民党体質の政治が露呈していることの表れであり、アベノミクスの欠点なのです」

と主張したが、総論として直接の批判はしていない。日本共産党は、

「国民の所得を直接増やす『矢』がない。国民の所得を減らして奪うものばかり。『アベノミクス』ではなくて『アベコベミクス』」

と、富裕層が豊かになれば国民も豊かになるとする、いわゆる「トリクルダウン理論」を批判した。

   では、個別の論点についてはどうか。第1の矢「大胆な金融緩和」については、民主、みんなの両党は、大筋では評価しながらも、

「デフレ脱却に向けた(日銀の)意欲だと受け止めますが、過度な円安やそれに伴う悪い物価上昇、金利乱高下、出口戦略などの懸念があります」(民主)
「デフレ脱却・景気回復のためには、みんなの党が主張する物価目標2%+実質成長2%によって名目成長4%を実現すること、景気回復を腰折れさせる消費税増税を凍結することが必要です」(みんな)

と注文を付けた。

民主、公共事業は「選択と集中」

   共産党は、

「景気低迷で企業には設備投資や事業拡大の意欲がない。そんな中で『異次元の金融緩和』をしても、投機とバブルを煽るだけ。最初から中央銀行がバブルを起こすつもりで政策を行うのは前代未聞。とんでもないゆがみが起きる。現に、金利や株が乱高下している」

と金融緩和そのものに反対姿勢だ。

   第2の矢「機動的な財政政策」については、「『国土強靱化』の名前を借りた公共事業のバラマキ」だとの批判も根強い。各党に公共事業へのスタンスを聞いたところ、みんなの党は、

「費用便益分析(B/C)の基準を設け、採算性(防災効果等を含む)が確保されるもの以外着工を認めるべきではありません」

と抑制姿勢で、共産党は「新規を抑制して維持と更新に」「大型開発から生活密着型へ」の2つの方針を掲げ、道路についてはメンテナンスを重視し、保育園や特養老人ホーム、既存施設の耐震化などに予算を割くように求めた。

   民主党は、選択と集中を図るとしながら

「必要な公共事業には取り組みつつ、教育、子育てなど人への投資を重点とする政策を進めます」

とした。

みんなの党「政府が成長分野を定めるという考え方」自体に疑問符

   第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」については、みんな、共産は批判的だ。みんなの党は、

「政府が成長分野を定めるという考え方自体を根本的に見直す必要があります。アベノミクスのアキレス腱は、既得権益者たちとのしがらみです」

と、そもそもの前提を批判。

「民間企業の自由な経済活動を後押しすることで経済成長を実現すべきです」

と民間重視の姿勢だ。共産党は、成長戦略の一環として「失業なき労働移動」を掲げていることについて

「限定正社員や裁量労働制は賃下げに向かう」

と主張。医療・介護についても、

「ニーズは沢山あるが、成長戦略にならないのは、その労働条件がすごく悪いから。医療のほとんどが公的医療だが、それを削減する話ばかりしている」

と悲観的だ。民主党は、成長戦略は民主党政権のものをベースにしているとしながらも、

「グリーンについては原発ゼロを否定し、ライフについては社会保障制度を揺るがし、農林水産業について戸別所得補償制度を見直そうとするなど、成長分野の足を引っ張る政策をはかろうとしています」

と民主党時代からの「変質」を指摘した。

共産党「賃上げが突破口になる」

   では野党は、どのようにしてデフレ脱却を図るのか。対案も聞いた。

   民主党は、

「『グリーン、ライフ、農林漁業、中小企業など成長分野を重点的に支援すること』と『一人一人の可処分所得を増やすこと』」

を挙げ、働く場を増やして賃金アップを図り、社会保障の安定・強化、所得の再配分を進める考えだ。

   みんなの党は、

「政策目標としての『名目経済成長4%の実現』、その論理的帰結としての『消費税増税凍結』、経済成長の手段として『国主導のバラマキ産業政策をやめ、徹底した規制改革・税制改革を推進すること』」

を挙げ、自民党と明らかに異なる政策として総論、各論(電力、農業、医療)合計12点を列挙した。

   共産党は、「内部留保」とも呼ばれる企業の剰余金に着目。

「まず内部留保をほんの少し動かして賃金や雇用に回し、そこを突破口にデフレを脱却しようとしている」
「ほとんどの大企業で内部留保1%を取り崩せば、月に1万円の賃上げが可能になると試算している」

といった主張を展開し、

「賃上げが突破口になる」

と繰り返した。賃上げをきっかけに消費が拡大し、景気が回復するとの考え方だ。