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神戸の老舗書店も閉店 後継者不足、ネット販売に押されて経営不振

   町の書店がまた一つ消える。神戸市の老舗、海文堂書店が2013年9月末に閉店する。8月6日付の自社ブログ「海文堂書店日記」にも、そう記している。

   日本著者販促センターによると、全国の書店は5月1日時点で1万4241店。最近の10年間に約5000店が閉店している。

「活字文化」の発信地、創業100年目前に・・・

創業100年目前に、店をたたむことに。(写真は、自社のブログ「海文堂書店日記」)
創業100年目前に、店をたたむことに。(写真は、自社のブログ「海文堂書店日記」)

   神戸の海文堂書店は、1914(大正3)年、海や船舶・港湾など海事関連書の専門店として創業。1970年代には海事書に加え、児童書や人文・社会分野の本も取り揃え、総合書店に転身。さらに郷土関連書籍を集めた「神戸の本棚」や、月刊通信「海会」や雑誌「ほんまに」の発行を通じて神戸の活字文化の発信地となっていた。

   帆船の図柄のブックカバーは読書家らに愛されている。しかし、ピーク時の1996年と比べて、現在は6割程度にまで売り上げが減少。経営不振が深刻化していた。今後は書店を閉店し、東京での出版事業などに専念する。

   海文堂書店は新刊書の販売とともに古書店の振興にも積極的だったが、兵庫県内では神戸・三宮センター街の「後藤書店」(2008年閉店)や、大正時代の創業で灘区の「宇仁菅書店」(12年閉店)などの歴史ある古書店が相次いで姿を消した。いずれも、後継者がいなかったことが理由だ。

   そして、8月末には神戸・三宮の商業複合ビルにある古書街「サンパル古書のまち」で、唯一営業を続けていた「ロードス書房」が、約30年続けてきた店を閉める。兵庫県内の郷土史資料を中心に集めて、長く歴史研究者らに愛されてきたが、ビルにかつてのにぎわいがなくなるなか、ビルの衰退や店主の病気などを理由に店を閉じる。

   神戸に限らず、町の書店の衰退は著しい。日本著者販促センターのまとめによると、バブル経済崩壊後の1992年に2万2500店弱あった書店は、10年後の2002年に1万9946店、その10年後の12年には1万4696店となった(アルメディア調べ)になった。

   しかも、この数字は本部や営業所、外商のみの書店も含んでいるので、「店売している書店はもっと少なくなる」という。すでに現時点で1万800店前後になるのではないか、と予測。そして、閉店する書店の多くが地方都市などの中小書店だ。

消費増税がとどめを刺す?

   中小書店が減少する原因は、後継者不足のほか、アマゾンや楽天などのインターネット販売(電子書籍を含む)や、BOOKOFFをはじめとした中古書店や大型書店の相次ぐ出店がある。

   なかでもネット販売の売上増は、町の書店に影を落としている。たとえば、アマゾン・ジャパンのネット書店の売り上げは2011年度が1920億円で前年比23.1%増。アマゾンと直取引契約している出版社は1460社以上になった、とされる。

   「今すぐ、本が読みたい」となれば、電子書籍でなくても翌日には本が手元に届く。商店街にあるような、町の中小書店だと欲しい本が置いていないことも少なくないし、注文してから1週間かかることもある。

   一方、ここ数年の新規出店は、郊外店や駅前、ショッピングモールと、資本力のある書店しか出店できなくなっている。読書家もそんな大型書店にしか足を運ばなくなった。

   加えて、消費増税でますます本が売れなくなる、との見方がある。消費税が5%になった1997年以降は7年間も毎年1000店以上の書店が店をたたんだ。

   書店数は2015年までに、1万店以下になると予測もある。