2024年 4月 16日 (火)

「吉里吉里語辞典」が蘇った【岩手・大槌町から】(9)

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吉里吉里地区の今年の盆踊り大会ではサケをかたどった山車が登場した=2013年8月14日、大槌町吉里吉里2丁目
吉里吉里地区の今年の盆踊り大会ではサケをかたどった山車が登場した
=2013年8月14日、大槌町吉里吉里2丁目

   NHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」で、驚いたときの感嘆詞「じぇじぇじぇ!」が、すっかり有名になった。岩手県久慈地方の方言だが、同じ三陸沿岸でも、大槌町吉里吉里(きりきり)地区では、「ばぁらぁ!」と言う。「ばぁ!」と「ありゃぁ!」が重なったと見られている。


   大槌町は、1889(明治22)年、大槌(おおつち)、小鎚(こづち)、吉里吉里の3村が合併してできた。大槌湾に面する大槌、小鎚地区に対し、吉里吉里地区は大槌、小鎚地区とは隔たっていて、船越湾に面している。劇作家の故井上ひさしの小説「吉里吉里人」で全国に知られ、独立独歩の気風が強く、独自の文化を築いてきた。

   その吉里吉里地区の日常語を収めた「復刻版 吉里吉里語辞典」が、今春、出版された。元の辞典は、地元の関谷徳夫さん(81)が2007年に編纂した。しかし、震災による津波で流失し、明治学院大学のボランティア支援により内容を充実させて復刻にこぎつけた。


   半農半漁の吉里吉里地区では、独特の漁師言葉が消えずに残っていた。関谷さんは保険代理店を営む傍ら、10年ほどかけて、こつこつと拾い集め、75歳のときに、「いとしく おかしく 懐かしく~私の吉里吉里語辞典」を出版した。7000語ほどの言葉が収録され、貴重な民俗資料と評価された。

   1000部作り、残った400部ほどの在庫が、津波で自宅とともに流された。途方に暮れていた関谷さんに、ボランティアで入っていた明治学院大学の浅川達人教授や学生たちが、救いの手を差し伸べた。写真や本などの救出活動をしていた学生が、がれきの中から、1冊の「吉里吉里語辞典」を発見し、復刻への足掛かりになった。

復刻された「吉里吉里語辞典」と関谷徳夫さん=2013年5月30日、大槌町吉里吉里4丁目
復刻された「吉里吉里語辞典」と関谷徳夫さん
=2013年5月30日、大槌町吉里吉里4丁目

   このオリジナル本は東京に持ち帰られ、電子データ化され、出版が計画された。誤字、脱字が修正され、言葉にアクセント記号が付けられ、今年3月に復刻された。関谷さんは、こう語っている。「標準語が普及し、若い人たちから吉里吉里語も失われつつあるのは寂しい。私にとっては、いとしく、おかしく、懐かしい言葉です。復刻されて感無量です」

   辞典はA5判で550ページ、4,200円(税込み)。問い合わせは一頁堂書店(TEL:0193-42-4189)へ。全国からの注文を受け付けている。


●辞典には例えば、次のような言葉が収録されている。

「朝な菓子」/朝、起き抜けの子供に与えられる菓子類▽「お夜ぉでんせ」/お気を付けてお帰り下さい▽「たぁ たぁ たぁ!」/猫を呼ぶ時の、一般的な呼び声▽「のらす」/馬鹿にする、甘く見る▽「ばぁらぁ!」/驚いた瞬間に反射的に口をついて出る慣用句▽「まやまや」/動作が緩慢で、歯がゆいまでに頼りなさそうな様▽「もよぉ」/衣類を身に付ける

(大槌町総合政策課・但木汎)


連載【岩手・大槌町から】
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