2024年 4月 20日 (土)

2億年前、日本に巨大隕石落下、「生命絶滅」か 熊本大などの研究グループが英科学誌に論文公表

   地球に迫りくる巨大隕石、人類は危機一髪――。何やらSF映画の一幕のようだが、おとぎ話とも言い切れない。今から約2億1500年前、実際に地球に落下して多数の生命体が絶滅に追い込まれた可能性が高まってきたのだ。

   熊本大学などの研究チームが、国内にある三畳紀後期の地層から隕石の「証拠」とも言える物質を発見した。かねてから唱えられていた説を裏付けるものとして、注目を浴びている。

地層に含まれていた高濃度のオスミウム

美しい星空を切り裂くように隕石が落ちてきたら……
美しい星空を切り裂くように隕石が落ちてきたら……

   熊本大学自然科学研究科の尾上哲治准教授らの研究チームは、岐阜県と大分県にある約2億1500万年前の地層から、地球に隕石が衝突したことを示す痕跡を発見したという。分析した結果、隕石に多く含まれる「オスミウム」という金属元素が高濃度で見つかった。成果をまとめた論文は2013年9月16日、英科学誌「ネイチャー」系のオンライン学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

   尾上准教授のウェブサイトには、岐阜県坂祝町の木曽川周辺における2012年の調査研究の概要が掲載されている。「三畳紀後期にはいくつかの生物絶滅イベントが知られています。その原因のひとつとして隕石衝突が考えられ」てきたが、その証拠が20年以上見つかっていなかった。三畳紀は、今から約2億5100万年前~1億9960万年前を指す。ほ乳類やワニ類の祖先が、そして後期には恐竜が登場する時代だ。

   地層にはオスミウム、イリジウム、ルテニウムといった白金族元素が「地殻に比べて最大3桁ほど多く」含まれていたという。これほど高濃度なのは「地球上の火山活動などのプロセスでは説明できないほど過剰」で、隕石との元素濃度との比較から「隕石の衝突によりもたらされたもの」と結論付けた。カナダ・ケベック州には、やはり約2億1500万年前に形成された大型クレーターがあるが、研究チームはこれも隕石の衝突が生み出したと考える。クレーターの直径は100キロ。この説が正しいとすれば、日本とカナダにこれほどの影響を及ぼした隕石は、どれほどの大きさだったのか。

   研究チームが算出した推定値は、最大で直径7.8キロだという。約6500万年前、隆盛を極めていた恐竜が絶滅した原因として有力なのも隕石衝突説だが、このときの大きさは直径約10キロとも言われている。「直径7.8キロ」というサイズが、どれほどの破壊力を有したかはおのずと想像できるだろう。

ロシア南部に落下した隕石は直径15メートル級

   隕石落下は、決して「昔話」ではない。記憶に新しいところでは2013年2月、ロシア南部を突然襲ったものがある。9月にはその「本体」が湖から引き上げられ、大きさは直径50~90センチ、重さは約600キロと報じられた。

   米航空宇宙局(NASA)によるとこの隕石の「原型」は、大気圏突入前は直径約15~17メートル、重さ約7000~1万トンと推計される。ロシア南部の上空20~25キロで爆発し、破片が飛び散ったのだがその時の衝撃波が地上に伝わった。威力はすさまじく、建物の一部が崩壊し窓ガラスが割れ、約1500人がけがを負った。重傷者も少なくない。「直径7.8キロ」の隕石と比べると約500分の1のサイズながら、大勢の住民が被害をこうむった。

   国内でも、隕石の記録は数多く残っている。国立科学博物館には、1885年に滋賀県大津市で見つかった「田上隕石」が展示されているが、重さは「国内最重量」の170キロ超。落下が確認されている隕石は、50件に上るという。

   近年だけを見れば、確かに人々の生活を脅かすような隕石は日本には飛んできていない。しかし尾上准教授らの研究チームによる論文によれば、三畳紀に落ちたとされる隕石の威力はカナダと日本という遠く離れた国を結びつけるほどの想像を絶する大きさだった。たとえ直撃を免れたとしても、落下地点によっては大きな影響を受けない保障などない。「招かれざる客」がやってくる時期など、誰にも予想がつかないのだ。

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