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史上最年少でボス就任、女性問題で追放、復活… 超高齢でも「最強のボス猿」ベンツの波乱万丈

   今、1匹の猿が日本中の注目を集めている。

   その名はベンツ。大分市の高崎山で約750匹のニホンザルの群れを束ねる「αオス」、いわゆるボス猿だ。

   推定年齢35歳、人間ならば110歳という超高齢なのだが、失脚、失踪といった事件を乗り越えながら、ボスとして君臨を続けている。その波乱万丈の「猿生」、そして統率力には、人間界のリーダーたちも真っ青だろう。

No.2に毛づくろいをさせ堂々君臨

   2013年10月5日、野生ニホンザルの餌付けで知られる高崎山自然動物園に、多くの報道陣が詰め掛けた。前日に山に戻った「失踪ボス猿」ベンツをカメラに捉えるためだ。

   9月半ばに山から姿を消した「C群」ボス・ベンツは、10月1日、約7キロ離れた住宅街でひょっこり見つかった。本来、2週間近くも留守にした場合、ボスと認められず排斥されることも珍しくなく、ベンツが群れに「復帰」できるかどうかに注目が集まっていた。

   しかし人々が見たのは、C群の猿たちを率いて悠々とエサ場にやってきたベンツの姿だった。ベンツはカメラを前に、序列No.2のゾロメに毛づくろいをさせ始める。目を閉じ、実に気持ち良さそうだ。一方のゾロメはいかにも甲斐甲斐しい。ボス「続投」を印象付けるその姿に、動物園の職員も「過去例のないことをやってのけた猿が、今回もやってくれたな」と驚きを隠さない。

メス猿に惚れ、群れから追放

   「例のないことをやってのけた」という言葉のとおり、ベンツの来歴は浮沈に満ちており、メディアにもたびたび取り上げられてきた。

   ベンツが最初に高崎山で頭角を現したのは、26年も前の1987年のことだ。高級外車を思わせる貫禄ある体格(「ベンツ」という名前の由来)、そしてケンカの強さに恵まれた若き日のベンツは、9歳にして史上最年少でB群の頂点に立った。

   ところが90年、ベンツはクーデターに遭う。C群のメス猿・リズに惚れ、ボスの仕事をサボったためだ。相手は当時27歳、人間でいえば80過ぎの「老婆」だったが、その手練手管にすっかりヤラレたらしい。色ボケしたところを若い衆に裏切られ、B群を追われてしまう。この追放劇は、直前に女性問題で退陣した宇野宗佑元首相に重ねられる形で報じられ、一躍全国区の有名猿となった。

   その後「恋人」のいるC群に逃げ込んだものの、リズは没落したベンツを相手にせず。B群ボス時代、C群をさんざんいたぶっていたこともあり、周囲からは白い目で見られ食うや食わずの毎日を送る。哀れんだかつてのライバルでC群の幹部・サイジョーが助け舟を出し、ようやく居場所を得たというエピソードなどは、ほとんど仁侠映画の世界だ。

100匹に迫る大群を一匹でけちらす

   その後のベンツはC群の中で「切込隊長」として活躍し、再び出世街道を走り始めた。中でも名場面は、2002年のA群との抗争だ。新たにA群ボスとなったブラボーが「親の七光り」で出世した凡将と見るや、単身で敵中に突撃した。

   当時の映像が残っているが、画面に映るだけでも100匹に迫る大群が、ベンツ1匹に追い回され悲鳴を上げながら逃げ惑っている。ボス・ブラボーはなす術もなく逃亡、長年の歴史を持つA群はたちまち瓦解してしまった。こうした「武勲」で男を上げ、ついに2011年、C群のボスに就く。複数の群れでボスに登りつめたのは、ベンツだけだ。

   その波乱万丈の生涯を、7日のワイドショーは盛んに取り上げた。「とくダネ!」(フジ系)では「番組No.2」笠井信輔アナが、

「(メインキャスターの)小倉(智昭)さんが帰ってきて、私が小倉さんに毛づくろいをするか」

と復帰劇を形容して小倉さんを苦笑させたが、「ボスの復帰」を待つはずの「朝ズバッ!」(TBS系)は無難な紹介に終始していた。